本研究では、高精度磁場侵入長測定を通じて七重項電子対が期待されるHalf-Heusler超伝導体LuPdBiとカイラル超伝導体候補物質である重い電子系超伝導体UTe2の超伝導ギャップ構造を調べた。 LuPdBiは、電子線照射によってキャリア密度と不純物散乱を系統的に制御可能であることを明らかにした。さらに、電子線照射による超伝導ギャップ構造の変化を調べたところ、電子線照射によってノード構造が非単調に変化することが明らかとなった。この非単調な変化は、超伝導状態として一重項対と七重項対が混成しているモデルで説明することができる。以上の結果は、LuPdBiにおいて実際に七重項電子対が存在しており、一重項対と七重項対の比は電子線照射によって制御できることを示している。本研究は、従来の分類を超えた電子対状態が実現していることを示しており、超伝導状態の基礎的な理解を大きく発展させるものである。 UTe2は近年発見された新しい重い電子系超伝導体であり、様々な特異な超伝導物性が報告されていることから非常に注目を集めている。本研究では、微弱な磁場を三つの結晶軸方向に印加した場合の磁場侵入長を測定することにより、超伝導準粒子励起の異方性とポイントノードの位置の決定を試みた。その結果、各軸方向の磁場侵入長変化の温度依存性を冪関数でフィッティングしたところ、全ての方向で冪が2より小さくなることが明らかとなった。この結果は、UTe2において時間反転対称性の破れたカイラル超伝導状態が実現していることを強く示唆している。また、各軸方向への励起量を比較することにより、超伝導状態がB3u+iAu状態であることを明らかにした。
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