研究課題
寄生蜂は、記載されている地球上の全動物種のうち20 %を占めると試算されるほど多様性に富んだグループである。寄生蜂の種の多様性に相関して、その種ごとに非常に多様な寄生形態をとることも知られている。しかしながら、寄生蜂の寄生を司る分子メカニズムはほとんど未解明である。本研究では、飼い殺し型寄生蜂の一種ニホンアソバラコマユバチ japonicaとその宿主であるキイロショウジョウバエDrosophila melanogasterを用いて飼い殺し型寄生の分子メカニズムの解明を目指した。A. japonicaは宿主のD. melanogasterに産卵を行う際に、同時に毒を注入する。そこで、A. japonicaの寄生に重要な毒成分を同定するために、毒腺のトランスクリプトーム解析、プロテオーム解析を行い、A. japonicaの毒腺で高発現する遺伝子を同定した。さらに別の飼い殺し型寄生蜂との比較ゲノム解析を行い、A. japonicaに特異的な遺伝子の絞り込みを行った。その結果、63遺伝子をA. japonicaの毒候補遺伝子として同定した。同定した63遺伝子のアミノ酸配列を解析した結果、約8割が分泌性のタンパク質であることが予測された。A. japonicaの全遺伝子中では分泌性のタンパク質は3割程度であったことから、同定した63遺伝子には分泌性のタンパク質が濃縮されていると考えられる。この結果は、寄生蜂の毒成分が毒腺から分泌され宿主体内に打ち込まれて作用するという予測と一致する。今後、同定した候補遺伝子に対するRNAiスクリーニングを実施し、毒候補遺伝子をさらに絞り込む予定である。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Frontiers in physiology
巻: 13 ページ: -
10.3389/fphys.2022.823418
Nature Communications
巻: 12 ページ: -
10.1038/s41467-021-25146-w