研究課題/領域番号 |
21J10930
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
渡邉 諒 東京都立大学, 大学院人間健康科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 行動計画 / Go-before-you-know / ステップ動作 / 予測的姿勢制御 |
研究実績の概要 |
スポーツや日常の多くの場面では,複数の可能性を同時に考慮して行動する必要がある。本研究では,「全身移動を伴う動作の中での二者択一状況」において,課題の成功だけでなく自身のバランス保持を考慮した姿勢制御がなされているのかを明らかにする。 本研究の検証のため,上肢リーチ動作において複数選択肢の行動ルールを調べる手法であるGo-before-you-know paradigmを立位ステップ動作に応用した課題を作成した。実験課題では内側(着地時の側方バランスが不安定)と外側方向(着地時の側方バランスが安定)の二方向が同時に選択肢として呈示され,どちらが正解かわからない中で参加者に右足でステップ動作を行うよう求める。参加者が動き始めた後に正解の方向が指定され,呈示された正解方向の床目印に正確に着地することが求められた。正解方向が呈示される前の足圧中心の左右移動量に着目し,参加者が内外どちらの選択肢を重視して蹴り出しを準備しているか評価した。 現在までに明らかになった結果として,第1実験では8名の参加者(うち分析7名)を対象として,正解方向の提示頻度が内外で等しい状況(内側:外側=0.5:0.5)にて上記の課題を実施した。計測データを分析した結果,参加者には内側の選択肢を重視した足圧中心制御パターンと,内側と外側の両方の選択肢に均等に構える制御パターンに分類されることが分かった。このことから,バランス保持難度を考慮した戦略と確率情報に基づく戦略の二つが立位下の二者択一場面における行動方略として用いられている可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,2021年度に予定した追加実験の前に,① 第1実験で得られたグループ全体結果に関する参加者個々の方略の解析 ② 映像呈示システムの遅延改善の2点について検討する必要が生じた。 ① 個々の参加者においても「選択肢のバランス保持難度を考慮した姿勢制御」を行っていたのかを検討するため,ベイズ統計モデルを用いた分析について検討した。この分析の結果,第1実験の参加者全員がバランス保持を重視した姿勢方略をとっているわけではなく,中間に構える方略を参加者も存在することが明らかとなった。今後の追加実験における結果の解釈を行うにあたり有益な検討となった。 ②第1実験において参加者の体重移動検出から映像呈示までのタイミングに遅延が発生しており,追加実験において影響することが懸念された。この点について時間遅延の改善作業,刺激呈示方法の検討を行った(PC2台から新規導入したPC1台に変更し,PC間の通信遅延を削減)。検討の結果,参加者の蹴り出し前および蹴り出し後の各タイミングに合わせた映像呈示が可能となり,実験に必要なデータを前回より安定確保できる見込みが立った。2022年度の実験は,このシステムを用いて追加実験を実施していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に行った分析結果から,参加者の方略には“バランス保持”と“確率”の2つ要因が影響している可能性が示唆された。この要因の影響について確かめるため, 2022年度はこれらの各要因を操作する実験を計画している。1つ目にバランス保持にかかるコストの影響を明らかにするため,「バランスの安定が担保された状況」を設定し,参加者がバランス保持を優先する方略から確率情報に基づいた姿勢制御に戦略を切り替えるのかを明らかにする。2つ目は確率情報の影響として,「確率的に内側よりも外側の選択肢になる可能性の方が高い状況」を設定する。この状況下で,参加者は確率的合理性に基づいて姿勢制御を変更するのか,一貫してバランス保持を優先した姿勢制御を行うのかを明らかにする。
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