研究課題/領域番号 |
21J10937
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中澤 廣宣 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | ボトムアップ合成 / スマネン / フラーレン / 湾曲π共役分子 |
研究実績の概要 |
本研究では湾曲お椀型分子スマネンを原料として用いて、フラーレン及びアザフラーレンの合成を目指す。スマネン(C21H12)はフラーレン(C60)の部分構造を有しており、周縁部6か所におけるブロモメチル化によりさらに炭素を6つ導入できる。当該年度では、ブロモメチルスマネンとメルドラム酸やマロノニトリルといった代表的な炭素求核剤との反応検討を行った。その結果、マロンサンジメチルを用いるとさらに炭素が3つ導入されたC30骨格、すなわちフラーレンC60の半球構造を合成できることが分かった。さらに、得られた半球分子の酸化反応の検討の結果、シリル化体を経由することでベンジル位が選択的に酸化されることが分かった。今後は得られた半球分子の二量化を鍵としたフラーレン合成を行う予定である。さらに、同様の合成法によりアザフラーレンC54N6の合成に着手する予定である。 本研究の達成はフラスコ内における液相反応のみでフラーレン骨格を構築するという有機合成における歴史的偉業であると考えている。また同時に、市販されているスマネンを原料として用いるため一般の有機合成化学者でもアザフラーレンを手にすることを可能にする。またこれまでにない炭素と窒素のみからなるアザフラーレン単量体の物性情報は球体分子の設計指針に新風を吹き込むことからこれらを応用した太陽電池や近赤外吸収材料などの分野の発展が期待でき、大きな社会貢献につながる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度ではスマネンのブロモメチル化と半球分子の二量化を鍵としたフラーレン類の合成法の確立を目指した。しかし、当初予定していたメルドラム酸を求核剤として用いたブロモメチルスマネンとの反応や酸素源とスマネニルアニオンとの反応が全く進行しなかった。そのため、いくつかの他の合成ルートを考案し、検討を重ねる必要があり、当初の予定よりも合成が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定よりを遅れているものの、着実に合成に関する知見は得られ、目的生成物の合成は視野に入ってきている。今後は、ベンジル位の酸化反応の収率の改善と二量化によるフラーレン合成およびアザフラーレン合成を行う。 ベンジル位の酸化反応では当初アニオンを経由した反応を想定していたが目的物は全く得られなかった。そのため、現在はシリル化体を経由したルートにて検討を行っており、今後もシリル化体に反応させる過酸の種類や溶媒の検討を行う予定である。また、二量化ではマロンサンジメチル由来のカルボン酸が炭素の付け根に残っていることから、そのカルボン酸により活性化させた付け根炭素にアニオンを発生させ反応を行うことを考えている。また、一般にホーナーエモンズ型の方が二量化には適しているため、ブロモメチルスマネンへのホスフェイトの導入も併せて検討していく予定である。フラーレンC60の合成後は、本手法をアザフラーレン合成に適用する予定である。 得られるアザフラーレンはまずは吸収、発光、サイクリックボルタンメトリーなどの基本的な構造情報を集める予定である。
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