申請者はヘテロフラーレンのボトムアップ合成に関する研究を行った。スマネンは炭素と水素から成るお椀型分子である。申請者が所属している櫻井研究室では、このスマネンに関する研究を精力的に行っている。その中で申請者は、スマネンはフラーレンC60の部分構造を有する点に着目し、スマネンを出発物質として用いたアザフラーレンC54N6の合成研究を試みた。単一種のアザフラーレンの合成は物理的手法および化学的手法のどちらを用いても困難である一方で、有機太陽電池などへの応用が期待できることからその合成法の開発は極めて重要である。。そこでまず初めに鍵となるスマネンの周縁芳香族部位の化学変換としてハロメチル化反応を検討した。その結果、臭化水素酸およびトリオキサンを用いたときに定量的にヘキサキスブロモメチルスマネンが得られることを見出した。この分子はすでに炭素を27個有している。次にこのブロモメチルスマネンと求核剤との反応検討を行った。その結果、第一級アミンを用いた場合には窒素をそれぞれ三つずつ導入できることを見出した。得られたC27N3は半球構造を満たしている。今後、得られたそれぞれの半球分子を適切な化学変換後、二量化することにより、アザフラーレンへの変換が期待できる。
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