研究課題
人口の高齢化が進行する本邦は近いうちに「心不全パンデミック」状態に陥ることが危惧されている。そのため、中高齢者における実践的な心疾患予防策を構築することは急務である。近年の研究により、日常生活中の座位行動が心疾患の危険因子として特定された。しかし、日常生活中の座位行動を削減することにより、心臓の生理学的指標へ与える影響は明らかではない。座位行動の削減は、低い運動強度で取り組めることに加えて、日常生活中に容易に取り入れることができる。以上から、中高齢者における座位行動削減の有効性を検証する研究は、実践的な心疾患予防策の構築に貢献すると考える。この社会的背景に対して、研究代表者がこれまでに進めた研究内容が2編、国際学術誌に掲載されている。その内容は、1) 日常生活中の座位行動時間が長い人は心臓圧受容器反射感受性が低いことを明らかにした内容、2) 非侵襲的かつ短時間(2分間)で、心血管疾患リスクを鋭敏に反映する心臓圧受容器反射感受性の測定法を開発した内容である。心臓圧受容器反射感受性の評価法の開発、座位行動の観察研究の成果から、さらに研究をステップアップさせるために、座位行動削減の有効性を検証する介入研究を実施する必要がある。そこで本研究課題は、中高齢者を対象に、座位行動削減が心臓生理学的指標に与える影響を明らかにする。座位行動削減の有効性を検証する本研究は、中高齢者における実践的な心疾患予防策の構築に貢献すると予想される。
2: おおむね順調に進展している
本年度は研究計画で予定していたように、中高齢者を対象に座位行動削減の介入研究を実施した。同時期に新型コロナウィルス感染拡大により緊急事態宣言が発令されたため、座位行動削減介入は教育的手法を用いて実施した。教育的手法では、研究対象者に3軸加速度計を用いた身体活動データのフィードバックを実施した。この介入研究はすでに完遂しており、介入により座位行動が削減し中高強度身体活動が増加したことを確認しており、一部の成果は学会発表を実施している。現在は主要評価項目(心臓圧受容器反射等)のデータ解析を進めている。完了次第、介入研究で得られた研究成果を学会や学術論文等で発信する予定である。また、同年度に座位行動や心臓圧受容器反射に関する論文が2編、国際学術誌に受理された。さらに複数回にわたり、国内・国際学会で研究成果発表を実施している。
2022年度は、2021年度に実施した介入研究のデータ解析をする予定である。加えて、得られた研究成果を、論文執筆、学会発表等により、国際的に発信することを予定している。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology
巻: 322 ページ: R400-R410
10.1152/ajpregu.00141.2021