研究実績の概要 |
近年日本経済において年齢-賃金プロファイルの傾きが減少し、平均的な若年労働者と中高年労働者の間の賃金の差は徐々に縮小している。一般的には「賃金カーブのフラット化」と呼ばれる現象である。この年齢-賃金プロファイルのフラット化の要因として本研究は労働者の高齢化による影響に着目し、どの程度影響があったのかを明らかにすることを目的として研究を行った。
集計データにより統計分析を行い、その分析結果をもとに執筆した論文が採択され"The effect of aging on the age-wage profile in Japan" (Inoue, 2022, JJIE)として公刊された。この論文の分析結果からは2000年以降の男性の年齢-賃金プロファイルの変化の多くが労働者の高齢化によって説明できることが示されている。
同時に、マイクロデータを用い分析の精緻化とメカニズムの解明を試みた。具体的には、就業構造基本調査の調査票情報を用いて生まれ年1年毎のコホートによる分析や地域別の分析を行った。残念ながら、利用した調査票における賃金情報が区間値で報告されており、数値に変換する際の手法の選択によって分析結果は変化し、頑健な結果が得られなかった。そのため、当マイクロデータを用いた研究は断念した。今後は異なる調査を利用することを検討し、データの質の改善により高齢化の影響をより精緻に明らかにすることを行っている。
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