令和3年度は、Cu2+を発色源とする優環境型青色無機顔料の創製を目指した。 新規な顔料母体として、平面型CuO4ユニットを有しており、青緑色を呈するLi2Cu5(PO4)4を選択し、そのLi+サイトをよりイオン半径が大きいNa+で部分置換し、CuO4ユニットの歪みを意図的に増大させることで、電荷移動吸収およびd-d遷移吸収を制御した。Na+を添加することで、CuO4ユニットの歪みによりCu-O間距離が増大した結果、d-d遷移吸収の中で最も短波長側に位置する2B1g → 2A1gの吸収が増大かつ長波長シフトし、約520 ~ 560 nmの緑色領域における吸収量が増大することを見出した。その結果、合成した試料の中で、(Li0.90Na0.10)2Cu5(PO4)4が高い青色度(-b* = 39.4)および純粋な青色を示す270°に近い色相角 (H° = 246.0°)を示すことを明らかにした。 また、構造が未知のNa4Cu(PO4)2を新規顔料母体として選択し、Cu2+サイトを異なる電気陰性度やイオン半径を有するMg2+、Ca2+、またはZn2+で部分置換した。その結果、平面形CuO4ユニットを含む化合物と同様、Cu2+と比較して同等のイオン半径を有しているものの電気陰性度が低いMg2+を添加することで生じるCu2+周囲の局所構造歪みにより、電荷移動吸収およびd-d遷移吸収における吸収効率の変化およびシフトが生じ、青色領域の反射率が増大することを見出した。中でもNa4Cu0.85Mg0.15(PO4)2が最も高い青色度(-b* = 38.2)を示すことを明らかにした。
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