研究実績の概要 |
本研究では、インテリジェント血小板凝集塊識別法(iPAC)を用いた血中の血小板凝集塊の時空間的特徴(大きさ、形状、成分、血中濃度、経時変化など)の迅速・高精度解析による血栓症の病態理解及び抗血栓薬の薬効評価を目指す。 まず、動物モデルとしてヤギを用いて、健常ヤギと人工肺装着モデルヤギにおける血中の血小板凝集塊形成の比較を行い、さらに血小板凝集塊成分の解析を行うことで、体内で形成された血小板凝集塊の時空間的解析の有用性を示した。動物モデルを用いて、三箇所 (pre-membrane, post-membrane, Artery line)での採血による血小板凝集塊の画像を撮った。3頭のヤギで実験を終え、それぞれのヤギを2ヶ月以上観察した。サンプルは週に2回採取され、各サンプルから10,000枚以上の画像が撮影された。さらに、抗血栓薬を投与したときの変化のデータの取得を実施した。 ヤギでの研究と並行して、ヤギで得られた結果からヒトでのiPAC装置の有用性を検討するため、人工肺を装着している患者(1例)と人工心臓を装着している患者(50例)で血液サンプルを取って、iPAC装置を用いた血小板凝集塊の画像を撮った。次のステップとして、データを解析して、ヤギでのデータとの相関(血小板凝集塊の成分、形態、血中濃度、経時的変化などの違い)を調査する。 本研究を遂行しることで、日本が血小板機能解析を含む血小板生物学において世界を牽引する存在になることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画の研究の上に、ヒトにおけるiPACの有用性の検討としてCOVID-19患者の血液サンプルにおける循環血小板凝集塊を評価した。COVID-19の特徴的な臨床症状として、微小血管血栓症の頻発が挙げられる。iPACを用いてCOVID-19患者の血液における循環血小板凝集塊の画像取得し、各画像上の細胞領域をセグメント化し、形態学的解析を行った。結果として、COVID-19患者の血小板凝集塊の濃度と、重症度、性別、死亡率との間に強い関連性があることを示している(Nishikawa, M., Kanno, H., Zhou, Y. et al. Nat Commun 12, 7135 2021) 。
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