研究課題/領域番号 |
21J11018
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
森笹 瑞季 日本大学, 生物資源科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 魚肉タンパク質 / 筋肥大 |
研究実績の概要 |
魚肉食摂餌によって起こる骨格筋肥大時の代謝変化から肥大メカニズムを明らかにすることを目的とした。本研究では、1. 筋肥大シグナル伝達経路の解析、2. 糖代謝機能の確認、3. 機能性因子の同定、を研究項目として計画した。本年度は1. 筋肥大シグナル伝達経路の解析、について着手した。 まず腓腹筋からタンパク質を抽出しiTRAQ法によるタンパク質の網羅的発現・定量解析を行った。その後、ingenuity pathway analysis解析により、変動の予測される上流タンパク質を推定した。その結果、ユビキチン・プロテアソーム系によるタンパク質分解やオートファジーの亢進に関連するFOXO signalingの抑制と、タンパク質合成や細胞増殖・分化に関連するinsulin-like growth factor 1(IGF1) signalingの亢進が示唆された。その後、これら経路に関連するタンパク質発現変化を確認するため、ウエスタンブロッティングに供した。ユビキチン・プロテアソーム系によるタンパク質分解やオートファジーの亢進に関連するAtrogin1やMyostatinは変化が見られなかったが、IGF1下流のprotein kinase B(Akt)及び、mechanistic target of the rapamycin(mTOR)の上昇が確認された。魚肉食摂餌により起こる骨格筋肥大にはAkt/mTOR signalingが関与していることが分かり、この内容を論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に着手予定としていた、筋肥大シグナル伝達経路の解析について、網羅的タンパク質の発現変化を解析できるプロテオミクスを導入することで、飛躍的に解析タンパク質数を増やすことに成功した。解析の結果、UniProtデータベース上で、およそ20000個のタンパク質の発現を確認することができた。これらのデータはパスウェイ解析を用いて解析を行い、変動の予測される上流タンパク質を推定した。それらのデータを論文として発表することができたため、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、前述した目的を達成するにあたり、1. 筋肥大シグナル伝達経路の解析、2. 糖代謝機能の確認、3. 機能性因子の同定、を研究項目として計画した。本年度は、2. 糖代謝機能の確認、及び3. 機能性因子の同定、について着手する予定である。まず2. において、先行研究により血清中の血糖値の減少がみられたため、肥大にともない骨格筋組織内の糖取り込みに変化があったのかについて確認する。まず組織切片を質量分析イメージングの手法を用いて、糖代謝に関連するアミノ酸や有機酸を可視化し、各部位・各筋線維での変化を観察することを試みる。その後PAS染色に供し、グリコーゲンの蓄積を明らかにするとともに、グリコーゲン合成酵素などの発現解析を行う。 3. において、魚肉タンパク質が骨格筋に直接働くのか、またその機能性因子は何なのかを明らかにするため、培養細胞株C2C12を筋管細胞に分化させたものを用いて解析を行う。まず機能性因子が骨格筋に直接働く可能性を明らかにするため、疑似消化ペプチドを作成し、C2C12の培地に添加し、昨年明らかにした肥大経路に変化が起こるのかについて確認を行う。予想される経路の活性化が観察されれば、その機能性因子を絞り込む目的で、HPLCによってペプチド画分を分画し、アッセイを行うことで機能性因子を同定する。魚肉由来の機能性因子は骨格筋に直接働くのではなく、小腸などを経由した間接的作用として働くという可能性もある。仮に糖代謝を亢進させる生理活性物質等が血清あるいは骨格筋中で増加していた場合、その生理活性物質がC2C12に与える影響について解析を行う。
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