研究課題
今年度は、生体マウスと腸管オルガノイドを用いてSREBP-1aによって合成される脂肪酸が腸管幹細胞の機能に与える影響を検討する実験を行った。LGR5-GFP CreERT2 TgマウスとSREBP-1a floxマウスを用いて作製した薬剤誘導型の腸管幹細胞特異的SREBP-1a欠損マウスを解析した結果、SREBP-1a全身欠損マウスと同様に絨毛高の低下や腸管幹細胞の機能異常が認められた。このことから腸管幹細胞内でSREBP-1aによって合成される脂肪酸が腸管幹細胞の分化・自己複製機能に重要な役割を果たし、絨毛の高さに影響を与えることが明らかとなった。また、SREBP-1a全身欠損マウスにおける絨毛高低下の原因となっている脂肪酸種を陰窩構成細胞の脂肪酸組成の解析結果から推測し、食餌からそれらの脂肪酸を補充することで、SREBP-1a全身欠損マウスの絨毛の高さが野生型マウスと同等までに回復することを確認した。この時、SREBP-1a欠損マウスでの陰窩構成細胞内の脂肪酸組成は野生型と同様になっており、腸管幹細胞の分化・自己複製機能も回復していた。同様の実験を腸管幹細胞特異的SREBP-1a欠損マウスでも行い、食餌からの脂肪酸の供給により、絨毛の高さや腸管幹細胞の機能が対象群と同等まで回復することを確認した。さらに、腸管オルガノイドの培養培地に特定した脂肪酸を添加することで、SREBP-1a欠損マウスから作製した腸管オルガノイドで認められた成長異常が回復し、SREBP-1a欠損の腸管オルガノドでも野生型の腸管オルガノイドと同等サイズのものが形成された。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子改変マウスの作製が順調に行われ、目的マウスの作製がすでに終了した。マウスの解析も計画通りに進展しており、腸管幹細胞の機能維持に重要な脂肪酸を特定した。
SREBP-1a欠損によって脂肪酸の変動がみられる脂質分画を明らかにする。その結果から脂肪酸が腸管幹細胞の機能を制御する機序を推測し、分子機序を解明する。さらに、野生型マウスとSREBP-1a欠損マウスの小腸内部を破壊し、再生過程を経時的に評価することで、脂肪酸による腸管幹細胞の機能制御が小腸の構造維持・再生に対して与える影響を明らかにする。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
iScience
巻: 24 ページ: 103117~103117
10.1016/j.isci.2021.103117
Nutrients
巻: 13 ページ: 3204~3204
10.3390/nu13093204
The FASEB Journal
巻: 35 ページ: -
10.1096/fj.202002784RR