研究課題/領域番号 |
21J11073
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
黒田 尚輝 熊本大学, 社会文化科学教育部, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
キーワード | 身体運動表象 / 加齢 / 実験心理学 / バーチャルリアリティ / 身体知覚 |
研究実績の概要 |
超高齢社会に投入した我が国では,高齢者の転倒予防を行うことが極めて重要な課題となっている。本研究では,自分の身体の正確な予測及び自分の身体運動に伴う周囲空間との関係性の変化についての正確な予測(感覚フィードバック予測)に主眼を置き,高齢者の身体運動表象の歪みとその歪みが引き起こされるメカニズムをベイズ理論の立場から解明することを目的としている。最終的には,得られた知見をもとに,転倒予防に有効な介入プログラムの提案を行う。 本年度は,【A】高齢者の身体状況模擬による身体運動表象への影響,【B】高齢者の身体運動表象の歪みに関する実験を進めた。具体的には,自己運動同定課題を実施し,実歩行パターンと身体運動表象が乖離する状況下では自己運動パターンの検出が困難になる可能性を示した。さらに,ミラーハンド実験では,身体知覚を視覚情報によって一時的に歪めた場合では,身体への気づきやすさがその戻りやすさに影響し,高齢者ではより戻りにくいことがわかった。さらに,身体運動に伴うイベントが発生したときの時間知覚(感覚フィードバック予測)では,高齢者は自発的な身体運動だけでなく非自発的な身体運動においても知覚時間が圧縮し(Intentional bindingがみられ),身体運動とそれに伴うイベントの結びつきが若齢者と異なることが示唆された。加えて,狭い隙間を通過する際の通過可能判断は,転倒リスクが高い高齢者ほど立位時により広い隙間であっても通れないと判断する傾向が見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,若齢者及び高齢者で実験を進め,高齢者特有の身体運動表象を複数解明しており,次第に高齢者特有の知覚がわかるようになってきている。したがって,おおむね順調に進展している,と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって,高齢者特有の異種感覚統合が生じることを明らかにした。引き続き,【A】高齢者の身体状況模擬による身体運動表象への影響,【B】高齢者の身体運動表象の歪みに関する実験を進め,高齢者の身体運動表象と転倒リスクとの関連性を明らかにするとともに,【C】高齢者の身体運動表象の神経基盤を解明していく。
|