研究課題/領域番号 |
21J11134
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宇田川 澄生 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 五放射相称 / 棘皮動物 / 進化発生学 |
研究実績の概要 |
棘皮動物は五放射相称という特殊な体制を獲得しているが、五放射相称という独特のパターンを形成する発生機構は未知である。左右相称の幼生が変態を経て五放射相称になる発生過程で、最初に五放射相称の形態を示すのが水腔と呼ばれる幼生の体内左側に形成される組織である。水腔は発生の進行と共に水腔葉と呼ばれる5つの突起を生じ、また環状に変形して五放射相称の構造となる。本研究では、五放射相称ボディプランの発生機構と進化過程を理解するため、この水腔における五放射相称パターンの形成機構の解明を目標とし、マナマコApostichopus japonicusを主材料種として解析を行なっている。 今年度は、まず水腔での五放射相称パターン形成に関与する候補遺伝子の選抜を目標とした。そのために、水腔特異的なRNA-seqデータや先行研究等の知見をもとに対象遺伝子を選抜し、実際の発現パターンをwholemount in situ hybridizationによってマナマコ胚で確認した。これまで水腔で特異的に発現する遺伝子はほとんど知られていなかったが、今年度における成果として、複数の転写因子やシグナル経路に関与する遺伝子が発現していることが明らかになった。その中でも特に、シグナル伝達を担う複数の遺伝子が水腔において入れ子状に発現しており、そのパターンは発生の進行に伴って複雑化していくことが明らかになった。これらの遺伝子は五放射相称のパターン形成に関与する可能性があり、来年度は本成果を元に遺伝子機能の解析や、他の棘皮動物を含めた系統間の比較実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は予定通り、水腔特異的なRNA-seq解析に基づいて実際の発現パターンをwholemount in situ hybridizationによってマナマコ胚で確認した。その結果、これまで水腔で発現することが知られていなかった多数の転写因子・リガンド・受容体を独自に同定することに成功した。さらに、遺伝子の機能を阻害することで発生過程における機能を解析する実験系の確立に向けた予備実験も進行中である。 上記の進捗状況は予定通りであり、次年度の解析に向けた着実な結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の解析で明らかになった、水腔特異的に発現する複数の遺伝子の機能解析を試みる。 実験に際しては、遺伝子のノックアウト、ノックダウンに加えて、薬剤投与によるシグナル経路の阻害も併用する。
また、マナマコで明らかになった水腔特異的な遺伝子の発現パターンが他の棘皮動物でも共通しているのかどうかを確認する。実験対象としては、ウニ類、ウミユリ類等を予定している。
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