研究課題/領域番号 |
21J11175
|
研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
神崎 千沙子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
キーワード | 超分子ポリマー / ブロック超分子重合 / ポルフィリン / マイクロフロー |
研究実績の概要 |
本研究課題では、これまでの分子集積技術では困難とされてきた、モノマーの種類、配列、分子量、さらに方向までを精密制御した超分子ポリマーの創製を目指している。分子集積の反応場としてマイクロフロー空間に着目し、2種類のモノマー分子をブロック状に配置した超分子ポリマーの創製と、そのブロックドメインサイズの制御を達成する。申請者はこれまで1種類のモノマー (TPPS) を用いた実験から、1)超分子ポリマーに対する異種モノマーの反応、2)分子量制御、3)ポリマーが異方的に成長している可能性 を実験的に確かめている。これまでの成果を基盤として、令和3年度ではまず第2モノマーとなる新たなTPPS誘導体を合成した。TPPSはテトラフェニルポルフィリンに4つのスルホン酸基が付加した構造であり、酸性水溶液条件で超分子重合を起こす既知分子である。既知のTPPSの構造を基にして、4つのスルホン酸のうち2つを他の置換基に置き換えた13種類の新規TPPS誘導体の合成に初めて成功した。またUVーVisスペクトル測定、原子間力顕微鏡観察の結果から、この分子はTPPSと同一の原理により重合することも明らかとした。令和4年度においては、この新規合成した分子を第2モノマーとして、マイクロフロー中でTPPSポリマーと反応させることで、ポリマーの片末端より、数を制御して連続的に反応・成長させる。導入するモノマーの濃度や導入位置を制御することにより、配列・分子量・方向を同時に制御したブロック超分子ポリマーの創製を確実に達成する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の達成のためには、主として1)第2モノマーとなる新たなTPPS誘導体の合成、2)新規TPPS誘導体の重合ダイナミクスの解析、3)ドメインサイズが制御されたブロック構造の創製の3項目の達成が必須となる。令和3年度においては、申請時の予定通り1)2)について詳細な検討を行った。これまでの知見を基に、1)に関して、本研究においてターゲットとしたTPPS誘導体の合成例は過去に報告されていないことから、まず合成経路の開拓に取り組んだ。反応経路を検討した結果、計7ステップで新規TPPSモノマーの合成に成功した。このスキームを基にして、側鎖部分の立体障害やポルフィリン環-側鎖部位間の結合様式の異なる13種類のTPPS誘導体の合成にも成功した。次に2)に関して、1)において新規合成したTPPS誘導体の会合挙動を検討した。まず、UVーVisスペクトル測定及び原子間力顕微鏡観察を用いた評価を行うと、当初の予想通り酸性水溶液中で超分子重合を起こすことが明らかとなった。また、これらのデータを詳細に解析した結果、合成したTPPS誘導体は側鎖の立体障害や結合様式に由来した重合速度や重合様式に違いが認められることも明らかとなり、ブロック型超分子を創製するための基盤となるデータをライブラリ化することに成功した。以上の通り、当初の計画通りおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は主に上記の3)について検討を行う。実際にマイクロチャンネルを用いた2種のモノマー分子をブロック状に配置した超分子ポリマーの創製と、そのブロックドメインサイズの制御に挑戦する。まずこれまで確立した条件に倣って、十字型合流部を持つマイクロチャンネルの中央導入口からTPPSポリマーを、側方導入口から第2モノマーとして前年度に合成した新規TPPS誘導体を導入することで、異種分子を反応させる予定である。これまでの研究より、マイクロフロー空間ではポリマーに対してモノマーが片末端のみから反応することを明らかとしている。従ってTPPSポリマーの片末端のみから連続的に第2モノマーが結合することで、ブロック構造が創製できると考えられる。このとき第2モノマーの導入位置や濃度はこれまで得られた各分子の重合ダイナミクスのデータを基に決定し、これらを変化させることでブロックドメインサイズを制御する。第2モノマーとしては前年度に合成した13種類のTPPS誘導体を用いるが、それぞれの分子についてTPPSポリマー末端への反応性に加え、得られる構造体のドメインサイズを評価することで、モノマー分子の立体障害との関係を明らかとする。本研究に用いるマイクロチャンネルについては、これまでに得られたデータを基にすでに前年度に設計・作成済みであり、直ちに実際の実験に供することができる。得られた構造体はこれまでに確立してきた評価法であるUVーVisスペクトル測定による重合度の推定、また原子間力顕微鏡による形態観察を行うことで問題なく評価できる。これまで得られた知見を基盤として、マイクロフロー空間を用いた配列・分子量・方向を同時に制御したジブロック超分子ポリマーの創製を確実に達成する。
|