現在、約5000もの太陽系外惑星が発見されており主星の近傍をわずか数日で公転するガス惑星であるホットジュピターと呼ばれる惑星が多数見つかっている。ホットジュピターのような惑星の形成および進化過程は太陽系の普遍性にもつながる重要な過程である。 主星からの強い紫外線によって加熱された大気が散逸することが知られている。こうした大気散逸過程は短周期惑星の進化を左右する過程である。観測においては散逸した大気が主星からのライマンアルファ放射を吸収するトランジットシグナルが主に用いられる。近年の観測によって惑星大気散逸が見込まれるにも関わらずライマンアルフの吸収が検出されない惑星系が見つかっており、その理解は短周期惑星の大気構造及び進化過程を知る上で喫緊の課題と言える。 本研究では散逸過程を支配する物理を明らかにすることで観測された系外惑星の大気構造に迫ることを目的としている。惑星大気散逸過程は重力、光加熱及びガス傍聴によって決まる。そこでこれらの物理から決まる温度やタイムスケールを用いて惑星大気の状態を分類した。ライマンアルファの吸収が検出されない惑星系は主星からの紫外線が少ないために大気散逸量も少ないものと紫外線が強いために強い大気散逸が期待されるにも関わらず散逸大気による吸収が見られない系があることがわかった。後者の場合は前年度に実行した輻射流体シミュレーションによって明らかになった恒星風の影響等の要因によってライマンアルファの吸収が妨げられていることを示唆している。
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