研究課題/領域番号 |
21J11266
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山崎 一哉 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 数値シミュレーション / 気候モデル / 雲解像モデル |
研究実績の概要 |
本研究では、全球気候モデルと雲解像モデルとを組み合わせる「スーパーパラメタリゼーション(SP)」の改良を行った。 全球気候モデルは計算コストが低く、大気海洋の長期間のシミュレーションに適しているが、解像度が低く積乱雲を解像できない。そのため、各格子内部での対流活動の量や大規模場への影響を格子ごとに診断するパラメタリゼーションが用いられているが、対流活動の再現性には限界がある。 一方、雲解像モデルは高い空間解像度で雲システムを直接表現し、積雲対流パラメタリゼーションの不確実性を取り除くことを目指すものである。全球を対象とした雲解像モデルでは、全球気候モデルが苦手とするマッデン・ジュリアン振動などの現象をよく再現できることが示されているものの、計算コストが高く、気候研究に高解像度全球気候モデルを用いるのは容易でない。 これに対して、SPは全球気候モデルの各格子に雲解像モデルの小さな領域を結合するモデルであり、雲解像モデル部分(子モデル)が積乱雲などの小スケールを計算する一方、全球気候モデル部分が大規模循環を担当する。SPは子モデルを3次元ではなく、鉛直・水平2次元に落としても問題なく動作するため、全球雲解像モデルと比べて計算コストを落とすことが可能である。 本研究は、SPの手法の改良に向けて、まず気候モデルMIROC6と雲解像モデルSCALE-RMを結合することで日本初のスーパーパラメタリゼーション「SP-MIROC」を実装した。これに際して、MIROC6で採用されている時間積分の手法がSPには不向きで数値的不安定をもたらすことが判明したため、MIROC6の内部構造を組み替えてより安定度の高い手法に変更した。これにより、安定して動作するSPの構築に成功し、次年度におけるSPの改良と雲システムの考察に向けた環境が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全球気候モデルMIROC6に雲解像モデルSCALE-RMを結合するにあたり、従来報告されていなかった数値的不安定が生じ、原因の特定と解消に向けたプログラム改修に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
安定的に動作するSP-MIROCを今年度構築したため、まずはその出力の検証と改良を推進する。さらに、スーパーパラメタリゼーションが得意とする熱帯気象現象を題材として、モデル再現性や存在理由に関する考察を行う。なお、熱帯気象現象に対する理論的考察に関しては、SP-MIROCのシミュレーション結果を有効活用する予定であるため、SP-MIROCの各種現象再現の向き不向きを評価し、適切な対象を柔軟に選定する。
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