線維化は、様々な組織において生じ、コラーゲン等の細胞外マトリックス蛋白質が過剰に蓄積している状態である。組織が線維化すると、硬くなり、最終的には機能不全へと陥るが、意外にも線維化に対する有効な治療薬はほとんど存在しない。そこで、線維化組織において過剰な細胞外マトリックス蛋白質の産生を担う筋線維芽細胞に着目し、新規治療標的分子を探索した。その結果、筋線維芽細胞に特異的に発現し、細胞外マトリックス蛋白質の産生を促進する分子を同定した。さらに昨年度は、In vitro、In vivoにおける実験から、その目的分子は特に肝臓の線維化を促進することを明らかにした。 本年度は目的分子がどのような分子メカニズムで肝臓の線維化を促進するかについて検討を行った。まず、目的分子の発現誘導メカニズムの解析を行った。活性化肝星細胞(筋線維芽細胞)は肝星細胞をはじめとする様々な細胞がTGF-bなどのサイトカイン刺激を受けて分化した形態である。そこで、TGF-b下流の主要なメディエーターであるSmad3の阻害剤であるSIS3を処置した時の目的分子の発現量を調べた。その結果、目的分子の発現量はSIS3により抑制され、目的分子はTGF-b下流のSmadシグナルにより、発現誘導されることが明らかになった。 また、目的分子の線維化促進メカニズムの解析するために、活性化肝星細胞において、目的分子をノックダウンし、RNA-Seq解析を行った。その結果、肝臓の中皮細胞に発現する分子の発現量が減少していることが明らかになった。中皮細胞は肝星細胞、門脈線維芽細胞と同様に、肝臓の活性化肝星細胞の起源細胞として知られている。このことから、目的分子は中皮-間葉転換を介して、活性化肝星細胞の分化に寄与し、線維化を促進する可能性が考えられた。
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