研究実績の概要 |
リピッドバブル(Lipid bubble, LB)は、単層のリン脂質にパーフルオロプロパンガスが内包された構造を持つマイクロバブルである。申請者のこれまでの研究から、担がんマウスにおいてLBを血管内投与後に腫瘍組織に超音波を照射することで、同時投与した薬剤の腫瘍組織への移行が促進されることが示唆された。しかし、適切な超音波照射条件の解明のためには、さらなる検討が必要である。本年度では、超音波の照射条件の変化に伴う薬剤の組織移行量の変動を明らかにすることを目的として、in vivo実験を実施した。 はじめに、マウスの耳介を対象に、超音波の出力設定が組織の血管透過性に及ぼす影響を観察した。LBとエバンスブルーの混合液をマウスの尾静脈より投与した直後に、右耳介に種々の強度およびデューティサイクルの設定で超音波を照射した。その結果、強度およびデューティサイクルの上昇に伴い、エバンスブルーの漏出範囲は拡大した。以上のことから、組織の血管透過性の亢進は超音波強度およびデューティサイクルに依存する可能性が示唆された。次に、担がんマウスに対し、7kDaのFITC標識デキストランとLBの混合液を血管内投与し、腫瘍組織に対して1-3 W/cm2の強度で超音波を照射した(デューティサイクルは50%に固定)。照射1時間後の腫瘍組織内のFITC標識デキストラン重量を算出した。無処置群に対し、LBと超音波2および3 W/cm2の併用群では、有意にFITC標識デキストラン重量が増加したが、2および3 W/cm2群間では有意な差は認められなかった。以上のことから、マウスの腫瘍組織では、高分子物質の組織への移行は超音波強度に依存しない可能性が示唆された。しかし、本実験では個体間で数値のばらつきが大きかったことから、手技を洗練させた上でn数を増やし、再実験による検証を行う必要があると考えられた。
|