本年度においては、①技能実習現場(受け入れ企業)、②海外での日本語教育(送り出し機関)、③日本での日本語講習(監理団体)の3現場のうち、主に②、③について研究を行った。 ②に関しては、協力機関における技能実習生日本語教育は従来の日本語教育とほぼ同様であり、技能実習に特化した日本語教育を新規的に考えることは行われていなかった。現場調査から、技能実習生日本語教育の改善を図る研究者の目指す「技能実習生のための日本語教育」と、実際の入国前講習実施機関において目指されるそれには、その教育の質と段階にかなりの乖離があると考えられる。次に、③について、講習実施機関単体で講習を完結させることは困難である様子が見られた。②との日本語教育面での繋がりは協力機関によって様々だが、繋がりを持った日本語教育を行うことができる環境の方が技能実習生にとって負担にならず、授業スケジュールを長期的に見ることができるため教育に幅が出ると言える。また、各協力機関の調査からは、「技能実習生のための日本語教育」に対する考え方について、技能実習生に対して特化した日本語教育を作り出すという意識から、日本語教育を行う対象が技能実習生であるというだけの意識まで、機関によって大きな認識の違いが存在した。 現在行われている②及び③における技能実習生日本語教育は、前年度の研究結果である①の受け入れ企業における技能実習生のリーダーを中心とした集団的な技能実習のあり方や、企業側から求められているコミュニケーションに必ずしも合致するものではない場合がある。受け入れ企業の協働現場の会話の分析から見られた日本語使用及びコミュニケーション、そして課題点から、技能実習現場のコミュニケーションに資する今後の技能実習生日本語教育への提案を研究成果としてまとめた。この成果を元に、今後は技能実習生に向けた日本語教育カリキュラムモデルを作成していく。
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