研究課題/領域番号 |
21J11557
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
夏目 祥揮 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 非接触プラズマ / ダイバータ / 高速分光 / 流体シミュレーション |
研究実績の概要 |
核融合炉壁の熱負荷を低減する非接触プラズマ中で磁力線を横切るプラズマ輸送が増大し、その輸送過程が非拡散的であることが観測されている。同輸送の増大は熱負荷分布を変化させることから、将来の核融合装置における正確な熱負荷予測のためには、その物理機構の解明が不可欠である。しかし、非接触プラズマ中で輸送が増大する物理機構は未だ不明であり、その解明には、プラズマに働く力がどのような物理過程を経て大きくなるか、を明らかにしなければならない。 本年度では、非接触プラズマ中で増大する磁力線を横切る間欠的な非拡散的プラズマ輸送と、中性粒子との関係を理解するための計測系を整備した。非拡散的輸送が発生する前後における中性粒子の時空間挙動を取得するために、統計的手法である条件つき平均法を分光計測に適用した。その時の参照信号としてプラズマ中に挿入した静電プローブのイオン飽和電流信号を利用した。 本年度の実験では、電離進行成分起因の発光線は観測できたが、より短波長の再結合発光線は有意な振幅を示さなかった。これは光学系によって短波長成分が減衰していることが疑われる。そのため、光学素子および光学系の改善を行なっている。光学系への自動ステージの導入を進めており、ファイバアレイの光を合算することで光量の増加を図っている。自動ステージとICCDカメラの制御プログラムを作成し、発光の1次元計測ができるようにした。 また、直線型プラズマシミュレーションコードのコード改善により、静的な輸送過程の理解も行なっている。中性粒子による影響を評価するために、中性粒子輸送コードで計算された中性粒子密度・温度やエネルギー・運動量損失をLINDAコードに反映できるようにした。これにより荷電交換や弾性衝突による損失を高精度化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験装置の改造や保守により実験データの取得に遅れが生じた一方で、シミュレーションコード開発が進展した。 非接触プラズマ中の輸送過程における中性粒子の静的な挙動を理解するために、流体コードと中性粒子輸送コードをカップリングを行なってきた。中性粒子輸送コードで計算された中性粒子密度・温度やエネルギー・運動量損失を流体コードに反映できるようにし、これにより荷電交換や弾性衝突による損失が高精度化された。両コード間を行き交うイタレーションの間で各コード内のプラズマ分布が大きく変化してしまい、それによる計算不具合が生じたが、変化前後のパラメータを利用した補正を行うことでシミュレーション計算を可能とした。また、各コードで計算された荷電交換のエネルギー・運動量損失を比較を行い、流体のモデルについて検討をおこなった。 実験においては、初期計測を行なっている。その結果から、光学系の改善を行い、計測系や解析プログラムに関するインフラの整備が出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
改善した光学系によって、短波長の再結合発光線を観測できるか試験する。これまでは、ヘリウムガスで計測の試験してきたが、再結合発光線が確認出来次第、希ガスや水素ガスによる輸送の比較実験を行う。比較実験結果から、非接触プラズマの動的輸送過程を理解する。 シミュレーションにおいては、流体コードと中性粒子輸送コード間のイタレーションを増やし、収束解を求める。その際に振動する場合には、補正方法を明らかにする。収束値と実験値を比較することで、非接触プラズマの静的輸送過程について理解する。
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