当該年度の研究では、SU(N) Hubbard 模型における平坦バンド強磁性の一般論の研究が進展した。SU(N) Hubbard 模型はSU(N)対称な相互作用をするN成分のフェルミオン系を記述する模型であり、これは強相関電子系を記述する典型的な模型である SU(2) Hubbard 模型の内部自由度に関する一般化である。また平坦バンドとは、巨視的な縮退を持つ一体のエネルギースペクトル構造を指す。これまで SU(2) Hubbard 模型に対しては、一般的な平坦バンドを持つ Hubbard 模型が強磁性を発現するための必要十分条件が知られていた。一方で、SU(N) Hubbard 模型では対応する条件は確立されていなかった。 本研究では一体のエネルギースペクトルの最低エネルギーに縮退を持つような SU(N) Hubbard 模型を考え、その基底状態がSU(N) 強磁性を発現する条件を調べた。その結果、一体のエネルギー準位の最低エネルギー状態への射影行列が既約性と呼ばれる性質を持つことが強磁性発現の必要十分条件であることを証明した。 加えて、本研究ではさらにこの結果がSU(N) 近藤格子模型と呼ばれる異なる模型に適用可能であることを見出した。具体的には、強磁性的な相互作用をする強磁性 SU(N) 近藤格子模型において、その一体のエネルギースペクトルの最低エネルギーにやはり縮退がある状況を考えた。そして上述の射影行列の規約性が満たされ、かつ、一体の最低エネルギー固有状態全体が考えている格子系を覆えるような時に、模型が SU(N) 強磁性を示すことを厳密に証明した。 本研究の結果は国内の研究会や国際学会で発表され、現在論文投稿中である。
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