研究課題/領域番号 |
21J11615
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
紺野 峻矢 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 量子コンピュータ / 量子光学 / 量子テレポーテーション / 量子情報 / 量子エレクトロニクス |
研究実績の概要 |
本研究は光量子コンピュータの実現を目指したものである。量子計算の実用性という観点において現在の課題は汎用性(任意の量子計算が実行可能)と誤り耐性の達成である。特に光の振幅に対して非線形な変換を行う量子操作は未だに実験的に実現されておらず、この量子操作を誤り耐性のある形で実現することが本研究の目標である。現在までに以下の2つの研究を行った。 1,上記量子操作の新たな構成方法を理論的に提案した。まず入力状態と補助状態として量子ビットとなる特別な量子状態を準備し、それらを干渉させた後に、測定及び非線形フィードフォーワード(測定値に基づいた操作)を用いることで出力状態を得ることができる。非線形フィードフォワードは現在までの測定型量子計算の研究で開発されてきた要素であるが、これが今後達成すべき誤り耐性型汎用量子計算においても重要な要素であることを明らかにした。さらに提案構成の動作シミュレーションを古典コンピュータで行い、高い動作精度を確認することができた。 2,提案した構成を実現するための実験を進めている。提案手法を実現するための課題は量子ビットとなる状態の準備であり、この状態の生成実験を行う準備を行った。このような状態は非常に量子性が高く、実験系のロスで容易に量子性が劣化してしまう。実験系のロスを抑えるために本実験ではロスの少ない通信波長の光を用いることとした。通信波長に適合する光学素子の選定、発注を行い、新たに光学系を構築した。現在までの進捗としては量子光源となる光共振器が完成したところである。今後はこの実験系を発展させ、量子ビットとなる状態を生成する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誤り耐性型光量子計算機の実用化に必須な量子操作の新規構成を理論的に提案できたから。また、本構成に必要な量子ビットとなる状態の生成実験の準備を行い、量子光源の開発に成功したから。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、誤り耐性量子計算で使用可能な量子ビットとなる状態の生成実験を行う。そのような状態は非常に量子性が高いため生成は容易ではない。そこでまずは生成が比較的容易な量子状態を複数生成し、それらを順次干渉させることでより量子性の高い状態を生成する。現在までの実験成果として量子光源となる光共振器は既に完成している。今年度はこの光共振器を用いた上で実験系をさらに発展させ、目標とする量子状態の生成実験を行う。さらに生成した量子状態を使用して、量子計算用の回路を実験的に実現することを目指す。この回路はこれまでの研究実績として理論提案したものである。非線形フィードフォワードの実験系を構築し、上記の量子状態を導入することで本量子回路を実現する。本実験の完成により光を用いた実用的な量子コンピュータの実現に大きく近づくと期待される。
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