光量子コンピュータの実現に向けて、誤り耐性の実現が最大の課題である。誤り訂正を行うためには物理系の冗長性を用いて論理量子ビットを構成する必要がある。光の系において特に有力視されているのは振幅の連続量の自由度を用いて論理量子ビットをエンコードする手法である。しかし、この論理量子ビットとなる光の量子状態は未だ実験では生成されていなかった。本研究ではシュレディンガーの猫状態と呼ばれる量子状態を逐次干渉させることで論理量子ビットとなる光の状態を生成する理論提案に着目し、この第一段目の干渉実験を行うことで本提案手法の原理実証実験を行った。生成される量子状態は実験系のロスにより容易に量子性を失ってしまうため、本実験ではロスの少ない通信波長帯の光を用いた。まず光パラメトリック発振器を製作し、これを用いてスクイーズ光を生成した。スクイーズ光から1光子を引き去ることでシュレディンガーの猫状態を生成した。この猫状態を2つ準備し、50:50ビームスプリッタで干渉させた後に、一方を振幅測定してコンディショニングを行った。生成状態の検証のために6基底での振幅測定を行い、量子トモグラフィを行った。本実験では光子検出と振幅測定を合計して3か所のコンディショニングを行うため、状態生成のイベントレート低下が予想された。そこで光子検出の効率向上と生成される状態の広帯域化によりイベントレートを向上させた。生成された状態と論理量子ビットとなる状態とのフィデリティは約0.5であった。以上から論理量子ビットとなる光の状態を生成する原理実証実験に初成功した。
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