研究課題/領域番号 |
21J11641
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
手島 慶和 広島大学, 先進理工系科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | π共役系ポリマー / n型半導体 / チアゾール / 有機トランジスタ / 有機太陽電池 |
研究実績の概要 |
半導体材料開発は有機薄膜デバイスの高性能化に欠かせず、特に不足している電子輸送性(n型半導体)ポリマーの新規開発は重要である。本研究では、従来の汎用ビルディングユニットであるチオフェンに対して電子不足性を示すチアゾールに着目し、これを用いた新規n型半導体ポリマーの創出を目指した。特に、①ジチアゾリルチエノチオフェンビスイミド(TzBI)系および②エステル置換ビチアゾール(BETz)系ポリマーについて検討した。 ①今年度、ポリマーの構造最適化を行った。エネルギー準位・溶解性の観点から、電子欠損性かつアルキル側鎖を有するビチオフェンイミドおよびチエノピロルジオンを共重合ユニットとして用いたTzBI系ポリマーを合成し、有機電界効果トランジスタ(OFET)へ応用したところ、n型のユニポーラー特性を示すことが明らかとなった。今後は電荷移動度の向上を志向しアルキル側鎖の最適化を行うとともに、有機太陽電池のn型材料としての応用を検討する。 ②ビチオフェンやビチアゾールを共重合ユニットとして用いたBETz系ポリマーを合成した。特に後者のポリマーは、ポリチアゾール誘導体として世界で初めてのn型半導体特性を示すことを確認した。本成果を学術雑誌として発表した(Macromolecules 2021, 54, 7, 3489-3497)。 一方、上記に加えて、当初計画にはなかったアルキル置換チオフェンおよびチアゾールからなる新規π共役系ポリマーの開発を進めた。これを用いて有機太陽電池を作成したところ、高い光電変換特性を示すp型半導体になりうることを発見した。これはチアゾールの電子不足性がポリマーのHOMO準位を効果的に低下させ、高い開放電圧を得られたことに起因する。このようにチアゾールがOPVのp型半導体材料としても好適なビルディングユニットであることを発見した(令和4年3月の応用物理学会で発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
TzBI系およびBETz系ポリマーにおいては、n型半導体特性を得ることに成功しており、概ね順調に進展していると言える。さらに、チアゾールの電子欠損性に着目したp型半導体ポリマーを開発し、有機太陽電池の高効率化において重要な高い開放電圧を与える材料になりうることを発見した。これは、シンプルかつ簡便合成可能な材料であるため実用性が高い。今後、アルキル基変更などの構造最適化を行うことで、さらなる変換効率の向上が期待できる。n型材料に加えて、p型材料への展開も推進できたことから、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、主にデバイスの高性能化のため、ポリマーの構造最適化を行う。TzBI系ポリマーは製膜性に問題があり、これは低い分子量によるものだと考えられた。そこで、重合条件検討により高分子量体を得ることを検討する。 BETz系ポリマーについては、ナフタレンジイミドやビチオフェンイミドなどの電子欠損性ユニットとの共重合を検討し、有機太陽電池のn型材料としての応用を試みる。 また、チアゾールを用いたシンプルなp型半導体ポリマーにより、実用性と高効率を兼ね備えた有機太陽電池の創出を目指す。具体的には、ポリマーのアルキル基の変更で溶解性と結晶性を、チオフェン数の変更でエネルギー準位の微細制御を行うこととする。
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