研究実績の概要 |
前年度では、チアゾールを含む新規ビルディングユニット(TzBIやBETz)の開発により、n型半導体ポリマーの開発とその性能向上に成功した。これと同時に、チアゾールが有機太陽電池(OPV)におけるp型半導体ポリマーとしても有用な芳香環になりうることを見出した。本年度は、TzBI系ポリマーの分子構造制御による電子移動度の向上と、チアゾールを用いたシンプルなp型半導体ポリマーによる、実用性と高効率を兼ね備えた有機太陽電池の創出を狙った。 TzBI系ポリマーの課題として、低い反応性と溶解性が挙げられた。そこでモノマー段階でさらに長いアルキル基(DH)とチオフェンスペーサーを導入したTzBI(DH)-2Tを合成し改善を試みた。種々のアクセプターユニットと共重合を行い、目的の新規ポリマーを十分な分子量と溶解性で得た。これらは有機トランジスタにおいてn型半導体特性を示すことが分かったが、電子移動度が1×10^(-3)程度と低く、今後最適化が求められる。次に、2,2'型および5,5'型で連結したビチアゾールを主鎖に有するシンプルな半導体ポリマー(それぞれPTN2とPTN5)を開発した。電子的特性にあまり違いはないものの、PTN5は薄膜中における凝集・結晶性がPTN2よりも非常に高いことを発見した。PTN5を用いたOPV素子は比較的高い12%程度の変換効率を示し、PTN2を用いた素子よりも3倍程度高い値であった。主鎖内におけるチアゾールの連結様式が薄膜構造ならびにデバイス特性に多大な影響をもたらすことを実証した。さらに、ベンゾジチオフェンと組み合わせたポリマー開発により、剛直な主鎖と溶解性を兼ね備えたp型半導体ポリマーの開発にも成功した。これを用いたOPV素子は14%を超える変換効率を達成した。 チアゾールが高性能半導体ポリマーを実現しうる重要な分子単位であることを実証した。
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