本研究の目的は、廃水処理汚泥中に存在している未培養系統群の生理生態学的特性を明らかにし、廃水処理における役割を解明することである。廃水処理汚泥中には未培養系統群に属する細菌で構成されているCPRに属する細菌が普遍的に存在しており、廃水処理に寄与していることが示唆されている。そのため、CPR細菌の生理生態学的特性を解明し廃水処理における役割を明らかにする必要がある。今年度は、昨年度に確立した活性汚泥中のCPR細菌の集積手法を処理条件が異なる様々な廃水処理場の活性汚泥と消化汚泥に適用し、アンプリコン解析とメタゲノム解析に供した。CPR細菌の集積手法により、解析を行った廃水汚泥中のCPR細菌を集積することに成功し、活性汚泥と消化汚泥から多様なCPR細菌が検出された。検出された多様なCPR細菌の中には、サンプル間で共通して検出されるCPR細菌が存在している反面、特定の処理条件でのみ検出されるCPR細菌も存在していた。特定の処理条件でのみ検出されるCPR細菌の中には、活性汚泥にてコア微生物である可能性があるものが含まれており、CPR細菌は廃水処理において重要な系統群の一つである可能性が示された。さらに、多様なCPR細菌のゲノムbinsを回収することにも成功した。活性汚泥中に存在するCPR細菌の中には、他者との相互作用に関わる遺伝子を持っており、共起する細菌も存在していたことから、寄生性もしくは共生性の生活様式である可能性が示された。
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