研究課題/領域番号 |
21J11681
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
丸山 直也 熊本大学, 自然科学教育部, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 多群会話空間 / 音環境 / 快適性 / パーティション / 音声明瞭性 |
研究実績の概要 |
当該年度に実施した内容について,以下に示す。 ・多群会話空間における音環境的快適性創出のための方策として計画していた,吸音材の設置及びパーティションの効果について検証した。実験では,天井吸音,パーティション,パーティション内吸音を音響条件として,それぞれの音響特性を把握し,ダミーヘッドマイクロホンによって朗読音声を録音した。録音した音声について学生を対象に主観評価実験を実施した。また,幾何音響シミュレーションソフトを用いて,パーティション設置等によって,音声レベルや音声伝送性能指標がどのように変化するか,解析を実施した。 ・これまでに多群会話空間として,ラーニングコモンズなどの学習空間について調査を進めてきたが,当該年度は学習空間における学習者の特性に着目した。具体的には,個人の発達障害特性によって周囲騒音から受ける影響が変わるのか,について実験を実施し,成果を騒音制御工学会等で発表した。 ・多群会話空間における人々の「会話のしやすさ」の評価構造を明らかにすることを目的としたインタビュー調査について計画し,評価グリッド法,イメージグリッド法,キャプション評価法などの調査法に関する方法論と研究例の文献調査を実施した。次年度は,インタビュー調査の実施により,多群会話空間における音環境の評価構造を明らかにし,その評価構造からこれまでの実験・調査に関する分析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスまん延の影響で,多群会話空間における現場実験・調査を実施する事が不可能であったため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果をもとに,多群会話空間における音環境的快適性に関わる要因について詳細に検討していく。具体的には,昨年度実施した実験室実験におけるパーティションの影響についてシミュレーションソフトウェアによる音場解析を行い,空間の音圧レベル・明瞭度分布から,パーティションや吸音材の効果を明らかにする。また,それらの関係から,多群会話空間におけるSTIの目標値を定める。 次に,会話しやすさ・聞き取りにくさのインタビュー調査の結果をもとに,多群会話空間における音環境の評価構造を明らかにする。 目標値を実現させるための要因として,背景音・残響・座席間隔に関しても同様に目標とする範囲を明確にし,それをもとに,空間の特徴に合わせた快適な音環境を目指した音環境設計指針を構築する。そして,実際の空間に対して設計指針をもとにして,音環境要因について制御し,指針の妥当性を検証する。しかし,本年度も新型コロナウイルスまん延の影響により,実際の多群会話空間による検討ができないことが十分に考えられるため,その場合は実験室実験や聴感実験等で代替する。 3年間の研究成果を総合して博士論文を執筆する。研究成果について,国内学会(音響学会研究発表会,日本建築学会大会),および国際音響会議(International Congress on Acoustic 2022)で発表する予定である。
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