当該年度に実施した内容について,以下に示す。 ・多群会話空間における音環境的快適性創出のための方策として計画していた,吸音材の設置及びパーティションの効果について実施した実験結果の分析を進め,日本建築学会,日本音響学会,International Congres on Acousticsで発表した。 ・多群会話空間の一つとして着目した,学習者の特性について分析を深め,成果を論文として日本建築学会技術報告集に掲載した。 ・多群会話空間における人々の「会話のしやすさ」の評価構造を明らかにすることを目的としたインタビュー調査に関する結果の分析を実施した。対象は25~70歳の男女40人であり,「会話しやすさ」,「会話しにくさ」,「聴き取りやすさ」,「聴き取りにくさ」というキーワードをもとに,評価語を抽出し,階層構造を整理した。 ・多群会話空間を評価するための物理的指標,および国内外の基準や指針などについてまとめた。 以上,複数の多群会話空間における現場調査・現場実験・実験室実験を通して,多群会話空間における音環境設計の有用性と建築音響的方策の有効性を検証し,今後の音環境設計のための知見を得ることができた。具体的には,吸音材の設置やパーティションの効果,音環境的快適性を評価するための評価語および評価構造を把握することができた。しかし,COVID-19の影響で多群会話空間における現場実験などが実施できなかったため,今後の課題として,現場での実証実験等を通して検証を行う必要があり,それによって具体的な設計指針の構築ができると考える。
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