本研究では、波長2 μm帯Tmレーザーの従来の限界を超えた短パルス化を目指し、広帯域な利得スペクトルをもつ新規Tm添加混晶sesquioxide結晶の開発とその結晶を用いたレーザー特性評価を行った。ドイツLeibniz-Institute for crystal growthに滞在し、チョクラルスキー法によるTm添加YScO3結晶の育成を行い、長さ5 cm、直径2 cm程のレーザー結晶の育成に成功した。育成した結晶の吸収・蛍光スペクトル、蛍光寿命の温度依存性を測定し、不均一広がりによる広帯域かつ平坦な吸収・誘導放出断面積スペクトルを確認した。その後、育成したサンプルを用いて0.8 μm帯レーザーダイオード励起による連続発振レーザー実験を行い、中心波長2.1 μmでのレーザー発振に成功した。本材料を用いたレーザーの報告はこれが初めてであり、かつ得られた最大スロープ効率51%は現在主流となっているTm添加混晶sesquioxideセラミックのレーザーよりも高い効率が得られた。 次に、日本において本結晶を用いてモード同期による超短パルス発振を試みた。ソフトアパーチャーカーレンズモード同期により、平均出力126 mWにおいて7光サイクル(49 fs)の超短パルス発振に成功した。これは現在までに報告されているTm添加混晶sesquioxideを用いたモード同期レーザーの中で最短パルス幅となる。本成果は学術論文および国内・国際学会にて発表した。
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