研究課題/領域番号 |
21J11831
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宋 新亜 大阪大学, 言語文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 中国近代文学 / 中国語教育史 / 日中知識人の交流 / 郁達夫 / 旧制高校 / 日本中国人留学生 / 創造社 |
研究実績の概要 |
今年は主に三つの軸を中心に研究を推進した。まず、日本中国人留学生の郁達夫の旧制高校での読書体験を中心に、資料調査を行った。国立国会図書館と名古屋大学公文書館にある『第八高等学校一覧』、『校友会雑誌』、ハガキなど資料を用い、郁達夫の留学体験を実証した。第二に、国会国立図書館が所蔵している『上海日報』に関する調査。今年は『上海日報』に掲載されている知識界、文壇、映画界、エンタテインメント界と関連する記事を調査した。そこで、1920年代から1930年代の上海に滞在している人々の日常生活の実態を明らかにすることができた。今年は関連記事の目次を作成した。来年度は東京大学図書館が所蔵している関連資料を調査し、『上海日報』と関連する研究を推進する予定である。第三に、戦前期の大阪外国語学校の中国語教育実態に注目し、政治権力の中心部であった東京とある程度の距離を置いた中国語教育活動を通じ、日本の周縁部にいた知識人がどのように同時代の中国に関する知識を再構築したのかを検証した。戦前の日本での教育・研究における中国語は、伝統的な訓読法によって、本来の統語システムを無視し、日本語の形音義によって再編され、結局一種の日本語になってしまっていた。このような国語化の結果、日本人は中国語を国語の枠組みの中で曲がりなりにもある程度は読解できるので、主体的に勉強する、またはその言語を支える文化などの要素を理解する必要に気づくことは稀であった。大阪外国語学校の教員は、教育現場で訓読法を排除し、同時代音で中国語を教授すると同時に、積極的に同時代の中国文学を紹介し、『支那及支那語』という雑誌を発刊した。このような語学研究と語学教育の相互関係のなかで、学生は一般社会での中国に対する認識の枠を離れ、自分の目から同時代の中国を見ることが可能となった。なお、本論文は『アジア太平洋論叢』(24号)に掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は『上海日報』、旧制高校、戦前日本での中国語教育史に関する資料調査が順調にできた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は二つの軸を中心に研究を推進する予定である。まず、東京大学図書館、東洋文庫が所蔵している『上海日報』および関連資料を調査し、1920~1930年代の上海に滞在している知識人の日常生活、そして日中知識人の交流を考察する。第二、東京都立図書館の實藤文庫を利用し、1920-1930年代の日本中国人留学生の日本認識に関する考察を推進する。
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