前年度から引き続き、数体の絶対ガロア群の最大副C商に関する遠アーベル幾何の研究を行った。 まず、剰余標数の復元に関して、円分指標と円分体論を用いる新しい手法を開発した。これにより、密度に関する仮定を弱める事ができた。 次に、体の同型に関して、内田興二氏の手法を修正して得られた新しい手法により、前年度まで課していた虚素点に関する仮定を外す事ができた。 これらの結果を用いて、最大副C商版ノイキルヒ・内田の定理を、「Cに関する素数の集合のディリクレ密度が0でない」という研究開始時に期待していたよりも弱い仮定の下で証明した。上記の結果以外に、Cに関する素数の集合のディリクレ密度が0の場合の部分的な結果も得られた。これは「最大副p商版」へのアプローチにもなっている。一方で、最大副p商版は、「最大2-step冪零商版」の反例の構成に関する論文(arXiv:2301.10342)において反例の存在が予想されており、複数のアプローチによる更なる発展が期待できる。 これらの結果をまとめた論文のプレプリントはarXivにて公開済み(arXiv:2303.02931)で、現在学術誌へ投稿中である。 また、昨年度に執筆した論文:「Isomorphisms of Galois groups of number fields with restricted ramification」の投稿作業を進め、Mathematische Nachrichtenにおける掲載が決定した。
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