研究課題/領域番号 |
21J11881
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松本 昭源 横浜国立大学, 環境情報学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 化学気相析出 / セラミックス / シンチレータ / 相分離構造 / 希土類酸化物 / 蛍光体 |
研究実績の概要 |
我々の研究グループでは、レーザー加熱を援用した化学気相析出法を利用することで、従来の気相法では到達し得ない高速成膜かつ特異な微細構造を有するセラミックスコーティングを報告してきた。中でも、申請者らは当研究費のHfO2-Al2O3系コーティングの合成を進める中で、気相から直接、相分離構造を有するHfO2-Al2O3系コーティングが合成できることを見出した。 2021年度は、これら気相からの相分離構造をシンチレータ材料へ応用するために、まずは、各種添加元素を導入した希土類酸化物の単相の気相合成に取り組んだ。対象としては、Eu3+添加Y2O3やCe3+添加Lu3Al5O12に取り組んだ。原料には、YやLu、Alの有機金属原料を用い、原料炉内で所定の温度へと昇温させて前駆体ガスとした。基板には、セラミックス平板や核種酸化物の単結晶平板を用いて、加熱ステージ上で予熱した後、赤外レーザー照射によって加熱した。合成した試料は、X線回折により相同定を行い、微細組織は走査型電子顕微鏡によって観察した。フォトルミネッセンス特性は、蛍光分光光度計で測定し、シンチレーション特性はX線照射下またはアルファ線照射下にて卓上分光器や光電子増倍管を用いて測定した。 X線照射下で、気相合成したCe3+:Lu3Al5O12膜は単結晶体と同様の5d-4f遷移由来による緑色の発光を示した。また、アルファ線照射下でのシンチレーション減衰プロファイルの測定より、合成したCe3+:Lu3Al5O12膜は、従来の単結晶体よりも早い応答特性を示すことが分かった。これは、溶融凝固法では到達し得ない高い添加元素濃度によるものと推察される。これら結果より、気相合成によってCe3+:Lu3Al5O12系シンチレータの合成を実証できた。この結果は、査読付き国際誌 (Sensor and Materials誌) に投稿、受理されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、LuやAlといった有機金属原料の気化温度の最適化を行った上で、それらの組成を変化させながらLu3Al5O12膜を合成し、生成相と微細組織の関係性を包括的に調べた。また、Y2O3の単結晶様膜合成に向けて、成膜温度と炉内圧力の関係を調べた。さらには、放射線応答特性評価に向けたX線、アルファ線のそれぞれ線源を購入、測定システムを立ち上げることができた。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展しているものと考えた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、いよいよLu3Al5O12-Al2O3相分離体の合成に着手する。既に、相分離構造が析出する基本パラメータは発見しており、これをもとに原料組成、成膜温度、炉内圧力といった成膜条件を変化させて合成、結晶相や微細構造の変化を調べる。これら微細構造について、シンチレータ特性との相関を評価し、並行して成長過程のその場観察装置を立ち上げる。一連の合成と評価実験を通じて、気相からの相分離成長プロセスを確立する。
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