研究課題
軌道上での極低温推進薬管理技術の確立に向けて、大型液化水素タンク内における沸騰凝縮を伴う気液二相熱流動現象の研究を行なってきた。界面張力が重力を卓越する宇宙空間では、エンジン再着火時などの動的加速度環境も含め相変化による液体挙動や圧力変動の経験的な予測が難しく、適切に流体機器を運用できない危険性がある。極低温推進薬管理技術は、こうした課題を解決し軌道上での推進薬の長期貯蔵・輸送の実現を目指すものであり、昨今計画されている様々な有人惑星探査の実現に欠かせない技術である。しかし、実機寸法タンクでの沸騰試験データが不足している上、極低温推進薬の熱流動特性に基づいた定量的な実機寸法タンク内現象予測手法は、沸騰現象(小寸法)とタンク(大寸法)のスケールの違いから計算コストも大きく未だ確立されていない。実機寸法テスト機の打ち上げによる実験的観測も困難であるため、地上試験から相変化を伴う気液二相熱流動特性を適切に予測する技術の開発が求められている。よって、軌道上での極低温推進薬管理に向けて、動的加速度・微小重力環境における沸騰気泡の成長を考慮した相変化モデルを新たに提案し、減圧時の実機寸法タンク内の相変化を伴う熱流動現象を解明することを目的とした研究を実施した。本年度の研究実績としては、気液界面での相変化モデルを開発し、大型タンク内での相変化を伴う熱流動予測を可能にした。新たに開発したモデルでは、計算コスト低減のため次のような工夫を加えた。物性値を1点で代表する格子が小さい場合は数値流体計算で直接沸騰計算し、大きな格子では数値流体計算に加え、小さくて捉えきれない現象はサブグリッドスケールモデルによって計算する。そして、サブグリッドスケールモデルでは、壁面での気泡成長モデルと、壁面以外では界面情報が不要な相変化モデルを用いた。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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