研究課題
今年度は、ディーゼル排ガス中の窒素酸化物浄化用の触媒反応及び劣化再生のメカニズムについて研究を行い、その成果を論文として発表した。In situおよびoperando分光を用いて触媒反応メカニズムの研究を行った。これらの見解はACS catalysisに筆頭著書2報を報告した。1つめは、予定していた銅ゼオライトのNH3-SCRの反応メカニズムの解析に挑戦した。さらに、同様の技術を用いて、酸化バナジウム触媒でのNH3-SCR反応の反応メカニズムの解明に挑戦した。銅ゼオライト触媒と酸化バナジウム触媒の反応メカニズムの類似性を見出した。従来、NH3-SCR反応の再酸化過程はNOとO2での過程が支持されてきた。しかしながら、ブレンステッド酸に吸着するNH3はルイス酸サイトに移動する事ができ、NOとO2の再酸化は還元再酸化サイクルの2周目を含んでいることが示唆された。再酸化過程は酸素のみで十分に進行することを証明できた。2つめは、これらの技術を拡張し、銀アルミナ触媒におけるアルミナ担体上での銀の凝集および分散するメカニズムとアンカーサイトの特定を試みた。アンカリングされた銀は原子状で高い触媒活性をもつが、凝集した場合、銀ナノ粒子となり触媒活性は低下する。アンカーサイトはγアルミナ表面の6配位のAl原子に隣接する水酸基であることを明らかにした。また、極めて流動性の高い銀ナノ粒子について電子顕微鏡による視覚的な解析によって、銀ナノ粒子と原子状の銀の変化が原子による移動であることも突き止めた。DFT計算やab initio thermodynamics によりアルミナと銀のアンカリングの関係性を詳細に示すことができた。
2: おおむね順調に進展している
ディーゼル排ガス中の窒素酸化物浄化用の触媒反応及び劣化再生のメカニズムを研究し、その成果を論文として発表した。In situおよびoperando分光を自ら工夫してメカニズム解明に応用し実験を遂行した。理論計算を用いた触媒表面のモデル作成も博士研究員の指導のもとで学び、研究に用いた。2021 年度ETH Zurich Young Researchers’ Exchange Programme between Japan and Switzerland に採択され、現在、スイスのPaul Scherrer Institut に留学中である(6か月)。
博士課程、最終学年のため、これまで得られた知見を論文として成果報告する。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
ACS Catalysis
巻: 11 ページ: 11180-11192
10.1021/acscatal.1c02860
巻: 12 ページ: 544-559
10.1021/acscatal.1c04924