研究課題/領域番号 |
21J11934
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩渕 祥璽 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | DNAナノテクノロジー / DNAオリガミ / 選択的分子輸送 / 分子トランスデューサー |
研究実績の概要 |
本年度は,DNA鎖の輸送機能の確認・人工チャネルを経由する分子・信号伝達機構の開発に取り組んだ. はじめに,本研究に用いる人工チャネルのDNA鎖輸送能力について評価した. 人工脂質二重膜であるリポソームの外側に数十塩基長の1本鎖DNAと人工チャネルを混合することで,1本鎖DNAのリポソーム外側から内側への輸送が確認された.この成果は,DNAと呼ばれる国際会議にて口頭発表に採択された. 分子輸送機構の設計については,当初の計画ではDNAオリガミを用いて輸送システムを開発する予定であった.しかし,同様の研究が複数報告されてきたことを踏まえ,設計思想の見直しを行った.その中で,DNAオリガミと同様のDNAナノテクノロジーを用いた分子トランスデューサー機構の設計に思い至った.これは,DNAによって構築されるsix helix bundleポアの内部に,上下方向に駆動する中軸2本鎖DNAを組み込むことで,脂質膜面越しに信号刺激・情報のみを伝達できる機構である. 初期状態ではこの構造は動作しないが,「鍵」DNA鎖または紫外光の入力により構造内部の信号鎖が露出し,膜面越しに信号DNA鎖が出力されるようになる.ポリアクリルアミド電気泳動及び蛍光・消光分子を修飾した構造の蛍光強度の測定により,設計したトランスデューサー構造が意図通りに作成されること及び紫外光の入力により中軸が構造から外れずに動作することを示唆する結果が得られた.これらの成果は国内学会において発表を行った. また,脂質二重膜に結合させるための疎水性分子を修飾したDNAナノ構造は溶液中で凝集しやすくなるが,界面活性剤を混合したゲル電気泳動を行うことによって凝集を解消し,構造を精製できることを見出した.この成果については現在論文投稿の準備を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画においてはシステムの筐体にDNAオリガミを用いる予定であったが,DNAナノテクノロジーによるナノ構造を用いる方針に変更した. これに伴い新規にトランスデューサー構造の設計を行った. 設計を行ったトランスデューサー構造の評価においては,構造が設計通りに形成されることを確認し,また,紫外光の照射によってトランスデューサー構造の中軸の固定が解除され駆動するようになることを示唆する結果が得られており,これらの結果は設計要件を満たすものである.以上の内容から,研究課題はおおむね順調に進展していると判断した. 今後は,中軸の駆動による信号DNAの露出・疎水基を修飾した構造の脂質二重膜小胞への結合・小胞上におけるトランスデューサー構造の動作の確認を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き,トランスデューサー構造の設計と評価を行う.本年度は溶液中での構造形成の確認・機能評価が中心となっており,実際に本デバイスを動作させる脂質二重膜面上での機能評価・小胞への埋め込みによる信号情報の伝達までは至らなかった.翌年度は,信号DNAの露出を行うために要求される構造の寸法・DNAの鎖長の検討と設計を行い,さらに疎水基を修飾したトランスデューサー構造の脂質二重膜面上における動作を実現する.
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