本年度は、まず、非冗長アレイ及び等間隔アレイのそれぞれに基づいた光フェーズドアレイを用いた単一ピクセルイメージング手法に関し、詳細な理論解析及び数値解析を行った。その結果、等間隔アレイにおいてはアレイ要素数Nに対し得られる空間分解点数は2N-1点になること、それに比較して非冗長アレイを用いることでN2-N+1点まで空間分解点数が増大することを明らかにした。これにより、非冗長アレイの利点を理論・数値解析の両面から明確に示した。他方、非冗長アレイを用いることで信号対雑音比にペナルティが生じる点も示した。特に1/Nでビーム中の光パワーが減少してしまう点が明らかとなり、明確なデメリットといえる。また、位相モニタ集積光フェーズドアレイについても検証を進めた。素子設計、特に回折格子アンテナの設計の不備等により、多少不完全性はあるが、位相モニタで得られた信号と遠視野で確認された像との間に十分な相関が確認された。今後、得られた知見をもとに設計にフィードバックすることにより素子特性の改善が見込まれる。位相モニタ回路については理論的な検討も進め、理論的かつ定量的に位相誤差や光電流検出が遠視野像品質に与える影響について検討した。 加えて、昨年度発案した面入射型の光変調器構造については、昨年に引き続いて作製・解析・評価を進めた。まず、従来のSiを用いた高屈折率差格子に対し、InPによる高屈折率差格子を用いることで素子の大幅な高速化が可能となる点を定量的に示した。特に、Si型においては光損失を度外視しても3GHz程度、光損失を加味すれば300MHz程度の動作帯域しか得られないのに対し、InPを用いることで光損失の影響なく40GHz程度まで高速化が可能であることを示した。実験では、InP高屈折率差格子の作製技術等を開発し、素子を作製した。
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