本研究では、植物体内亜鉛利用効率が低下しているオートファジー欠損植物に対してゲノムにランダムな変異を導入する処理を行ったM2植物群から亜鉛欠乏耐性を得た個体を選抜している。これら耐性個体は、液胞内の遊離亜鉛イオン量の減少が感知されないことにより、亜鉛欠乏下でも過剰な鉄吸収が促進されておらず、亜鉛欠乏症状が発症していないと考えられる。このため、当該変異体について変異箇所を特定することで、新規液胞内遊離亜鉛イオンセンサーが同定できると期待できる。本年度(2022年度)は、前年度に選抜した7ラインの亜鉛欠乏耐性個体について次世代シーケンサーによる変異箇所の特定を行った。変異箇所の高精度な特定には,戻し交配を行い、無関係な変異の数を削減することが重要である。そこで、上記の7ラインについて、それぞれ戻し交配を行い、BC1F1種子を回収、これを自家受粉させてBC1F2種子を回収した。シーケンス解析用のゲノムDNAは、亜鉛欠乏条件で再選抜したBC1F2植物体各ライン60個体以上から調整した。このシーケンス解析の結果、4ライン分について候補遺伝子を擁立することができた。これらの候補について、遺伝子型を個体ごとに個別に確認することで、次世代シーケンス結果の妥当性を確認した。さらに、一部の候補遺伝子について、蛍光タンパク質を付加したコンストラクトを作成し、細胞内局在解析を進めた。また、さらに高精度に変異遺伝子を特定するために2回の戻し交配を経たBC2F2植物も用意した。これらについて、亜鉛欠乏条件での再選抜を実施し、5ライン分について次世代シーケンスに供するのに量的および質的に十分なサンプルを調整した。
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