研究課題
今年度は、副次的な研究課題である出土資料デジタルアーカイブの構築を進めるため、出土資料上の古漢字を対象としたデジタルデータの作成及びそれを用いた検索システムの考案に注力した。人文情報学分野の学会発表及び論文執筆に努め、成果を国外研究者に伝えるために国際会議での発表も行った。まず出土資料がデジタル環境でどのように取り扱われているかという前提について整理を進め、これをまとめた論考は『日本漢字学会報』第3号に掲載された。また、出土資料上の古漢字情報に対してどのようなデジタルデータの作成及び検索システムの設定を行うべきかという議論を「The 11th Conference of Japanese Association for Digital Humanities」にて発表し、同発表では「Historiographical Institute Poster Prize」を受賞した。ここでの議論を土台として、検索機能を搭載したデジタルアーカイブのデモシステムをWebアプリケーションとして実装したものを「じんもんこん2021」にて発表し、その内容は『じんもんこん2021論文集』に掲載された。じんもんこん2021で議論した内容は「2021年清華-東大学生論壇」にて中国語に改めた上で発表を行った。一方、出土資料上の古漢字デジタルデータ研究に資するために中国古典籍のデジタルテキスト対するマークアップ研究も進め、TEIフォーマットを利用した中国古典籍のマークアップ案を「デジタル仏教学シンポジウム2021 人文情報学による仏教知識構造化の新潮流」にて紹介した。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルス感染症の影響から、研究の主軸として掲げた用字避複研究に必要な資料閲覧の機会が大きく失われ、また中国に渡航した上での研究遂行予定も延期されることとなった。そのため本年度は用字避複研究ではなく、副次的研究であるデジタルアーカイブの構築に集中することとした。研究成果としての論文は複数報掲載され、また学会発表も複数件行うことが出来、受賞という形で成果を認められた。用字避複研究自体の進捗はまだ芳しくないが、このデジタルアーカイブ構築は用字避複研究の定量調査に有用であり以降の研究能率に直結するため、全体としておおむね順調に進展していると判断した。
本年度作成したデジタルアーカイブのデモシステムは、現時点で用字避複研究に対して充分に有効的に稼働している。そのため、今後はこのシステムを利用しつつ「包山楚簡」「郭店楚簡」などの資料の定量調査に尽力する。同時に人文情報学に関わる議論も平行して行う。具体的には、作成した古漢字デジタルデータの妥当性についての再検討、及び中国古典籍デジタルテキストのマークアップ手法に関する更なる議論を視野に入れている。また来年度にも改めて中国に渡航した上での研究遂行を計画しているが、中止となることも想定して研究を進める。
「じんもんこん2021」での発表のために構築した、出土資料デジタルアーカイブのデモシステム。
すべて 2021 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
日本漢字學會報
巻: 3 ページ: pp.93-111
The 11th Conference of Japanese Association for Digital Humanities 2021
巻: - ページ: pp.114-116
じんもんこん2021論文集
巻: 2021 ページ: pp.64-71
人文情報学月報
巻: 121 ページ: -
巻: 122 ページ: -
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