研究実績の概要 |
本研究では, Morrey空間の性質を深く調べるため, その拡張であるMorrey-Lorentz空間を導入することで議論を行ってきた. 特に今年度はMorrey-Lorentz空間に対するアトム分解を研究テーマとして取り上げ, 成果を挙げることができた. 一方で, Bourgainによって導入されたBourgain-Morrey空間の研究を行い, 様々な性質を得ることができた. Bourgain-Morrey空間もMorrey-Lorentz空間同様, Lorentz空間が深く関係していることが分かった. Morrey空間の研究に並行して, 理化学研究所の共同研究として機械学習の研究にもかかわった. そこでは, ニューラルネットワークの普遍性定理定理の拡張を考察し, 厳密な照明を与えた. 拡張としては, 一様収束性やLebesgue空間上の収束に限らず, 様々な関数空間でも収束性が議論できた. 関数空間を変えることができれば, ニューラルネットワークに対して扱える関数の幅が広がってくる. さらに, 従来の普遍性定理では, コンパクト集合上の関数について考えられ, 局所的な場合について考えられてきたが, 本研究では新たに領域の取り方に依存しない大域解的な場合について, 拡張を与えることができた. 加えて, 川澄氏と小野氏との共同研究により, 他の関数空間としてOrlicz空間に着目して研究を行った. 実際に, Orlicz空間の弱型について前双対の構成に成功した. 前双対を与えることは, 双対性の議論から線形の場合に帰着できるため, 応用面が多く優れている. 本研究では, 応用としてFefferman-Steinのベクトル値不等式を与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では, Morrey-Lorentz空間に対するアトム分解を対象に研究を行った. その際に, Hardy-Morrey-Lorentz空間と呼ばれる超関数の空間を導入した上でアトム分解を議論し, その特殊な場合として結論が得ることができた. また, Morrey-Lorentz空間には特別な場合としてMorrey空間の弱型も含んでいるため, アトムの条件をさらに広げることができ, 既存の結果の改良に成功した. そして, 作用素の弱型の有界性を駆使することで条件の端点の場合についても議論した. 応用としては, Olsenの不等式と呼ばれる重み付きの分数冪積分作用素の荷重付き有界性の改良ができた. この不等式はSchrodinger作用素の正値性の必要条件を与えている, 量子力学に対する応用がよく知られていて, その必要条件を広げることができた. 本研究成果は論文にまとめ現在投稿中である.
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今後の研究の推進方策 |
本研究でアトム分解が議論できたため, 今後の研究の推進方策の一つはその応用として新たな問題を考察することである. 例えば, 古典的にはHardy空間上の種々の作用素の有界性が研究されてきたため, それをHardy-Morrey-Lorentz空間上の有界性に拡張することである. 有名な例としては, Hilbert変換のL^1有界性は成り立たないが, Hardy空間H^1上では成り立つことが知られている. このように指数条件の端点の場合の振る舞いが重要である. 一方で, アトム分解の新たな応用として, 双線形分数冪積分作用素のMorrey空間上の有界性を指導教授の澤野氏との共同研究により与えている. すると, 本研究の成果によりこの結果が拡張できることになる. また, 既存の応用方法に限らず新たな応用例を与えることでMorrey-Lorentz空間の性質をさらに詳しく調べることができる. 今後の研究の推進方策の二つ目は, Morrey-Lorentz空間に対する交換子作用素の研究である. 作用素の有界性を調べることは関数空間の性質を調べるうえで重要な手段になっている. 以前の研究では交換子作用素として, 特異積分と可測関数の各点積を入れ替えて差を取る作用素を取り上げて, Morrey-Lorentz空間上の有界性を与えた. そのため, 今後の研究では, そのコンパクト性を考察する. コンパクト性を調べることは, スペクトルの計算に関係していて, それは関数解析に深くかかわっている.
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