本研究では、太陽電池の変換効率が比較的低い350 nmの紫外領域から550 nmの可視光領域の光を、シリコンの変換効率が高い領域の光へ変換可能な新規ダウンシフト蛍光体を創製し、その発光メカニズムについて明らかにすることを目的としている。当該年度も、引き続き溶融集光炉を用いた新規ダウンシフト蛍光体の探索に取り組み、その結果、いくつかの新規ダウンシフト蛍光体の開発に成功し、その発光メカニズムを明らかにした。 [1]Ce3+を賦活したBa5La3MgAl3O15において、412 nm付近の近紫外励起により500 nmにピークトップを持つ緑色発光が観測された。Ba5La3MgAl3O15について、Rietveld解析による結晶構造の精密化を行ったところ、Ba6La2Al1.5Fe2.5O15と同一の構造を示すことが明らかになった。また、格子パラメータ変化、蛍光寿命解析、発光スペクトルの成分解析によるCe3+の占有サイトを調査した結果、Ce3+はBa5La3MgAl3O15中のBaO6と(Ba/La)O8に優先的に固溶することが示唆された。得られた成果は、Inorganic Chemistryに採択・掲載された。 [2]溶融急冷炉により合成したSr2Ba2P2O9:Eu2+の結晶構造を単結晶構造解析から特定し、その蛍光特性を初めて明らかにした。単結晶構造解析の結果から、SrとBaのレイヤーが交互に積層した層状化合物であることが明らかになった。Eu2+を固溶したSr2Ba2P2O9:Eu2+は、390 nmの近紫外光励起により580 nmにピークトップを持つ黄色発光を発現した。一連の実験結果については、現在論文執筆準備中である。
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