重力崩壊型超新星爆発を起こす大質量星の中には、爆発の直前に自身の恒星質量に匹敵する量のガスを放出するものがあると考えられている。この大規模な質量放出現象は既存の恒星進化理論では説明ができない振る舞いとして注目を集めている。本研究では質量放出機構としての連星相互作用に着目し、その力学進化と期待される電波放射を数値的に調べ、星周物質の多次元構造や観測的診断法について示唆を与える。 前年度にて遂行した連星中性子星の形成に至る超新星の進化に関する数値的研究の成果について論文を改訂し、国際査読誌にて受理・出版された。本研究により、爆発直前の質量放出過程のうち、共通外層過程よりもロッシュローブオーバーフローの方が超新星・超新星残骸としての進化において非球対称な成分を卓越させ得るという点で重要である可能性を示唆した。本研究の内容は米国で開かれた国際会議にて口頭講演を行い成果報告をした。さらに、その国際会議の渡航に関する報告書を日本天文学会の月刊誌に提出し、掲載された。 その後、前年度で課題となった以下の二点について研究を進めた。(1)星周物質の多次元構造が超新星・超新星残骸の進化に与える影響に関する直接的な検証。多次元流体計算の公開コードを用いて、テスト計算を実行した。(2)多次元構造を診断するための前提として、超新星の電波放射における入力パラメータの縮退関係の理解。超新星の電波放射を計算するためには多数の入力パラメータが必要で、それらの縮退関係を理解することが必要不可欠である。そのためのマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)によるシミュレーションを行った。 (1)のテスト計算、(2)のMCMC計算では本研究費にて購入したデスクトップパソコンを利用した。
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