ウイルス性出血熱を引き起こすエボラウイルスは、ヒトを含む霊長類に重篤な出血熱を引き起こす。アフリカで散発的な流行が繰り返されているほか、欧米への感染輸入例が報告されていることから本邦でも輸入感染症として懸念されており、より効果的な予防薬・治療薬が求められている。しかし、感染性エボラウイルスの使用はBSL-4施設に限られることもあり、ウイルス増殖の分子機構の詳細は未解明である。本研究では、感染性を持たないエボラウイルス様粒子を用いて、エボラウイルスのヌクレオカプシドの構造をクライオ電子顕微鏡により決定し、転写・複製機構の構造基盤を明らかにすることを目的とした。 本研究の課題は、ヌクレオカプシドの精製が困難なことにあったため、エボラウイルス様粒子内のヌクレオカプシド構造を対象とすることでヌクレオカプシドの精製を不要とするアプローチに切り替えた。 クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析法により、既存の報告よりも高い分解能でヌクレオカプシドの構造を決定した。得られた構造から、ウイルス核タンパク質およびウイルスタンパク質VP24を含むヌクレオカプシドの原子モデルを構築した。また、決定した構造・モデルをもとにウイルスタンパク質変異体を設計し、それらを用いたウイルス学的アッセイを行うことで、転写・複製に重要なウイルス核タンパク質およびウイルスタンパク質VP24間の相互作用を新規に同定した。 現在、これらの結果を報告する投稿論文を執筆中である。
|