研究実績の概要 |
数値流体解析手法の一種であるMoving Particle Semi-implicit (MPS)法を用いて原子炉過酷事故時に生じる溶融炉心-コンクリート相互作用(MCCI)の現象理解を深めるため、仏国で実施されたVULCANO VF-U1実験を対象に、令和3年度は以下の事項を実施した。 まず、MPS法の離散化誤差低減手法Second-Order Corrective Matrix(SCM)法の導入、高粘性流体固化アルゴリズムと液-液界面張力ポテンシャルモデルの適用及びOpenMP/MPIに基づいたメモリ並列化によりMPS法を高精度・高速化し、MCCIにおける溶融物金属相の局在化と凝固過程の解析を可能にした。さらに、本研究で開発する並列3次元MPS法を用いてVULCANO VF-U1実験の実寸体系のMCCI解析を実施するため、高分解能マルチスケール解析に対応する並列計算機システムを構築した。 その上で、上述の開発手法によりVULCANO VF-U1実験の解析を実施した。それにより、金属相は、溶融物全体が高温の実験初期-中期に低密度の溶融コンクリートに誘起された上昇流によりコンクリート壁に沿い上昇し、溶融物が冷却される実験中期-後期にかけて固相線/液相線温度が高いため先行的に固化した炉心由来酸化物相の層の下で密度差に伴う沈降が妨げられることで、実験後に確認されたような特徴的な凝固分布を示すことが明らかになった。 このように、MCCIの実験後の凝固物分布からのMCCI最中の詳細な伝熱流動を逆推定する試みは世界でも類を見ず、この研究による新たな理解は査読付学術論文誌でも発表された [1] 。 [1] Fukuda, T., et, al., Nuclear Engineering and Design, vol. 385, No. 111537, 2021
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