研究課題
令和3年度に引き続き、原子炉過酷事故時に発生する可能性がある溶融炉心-コンクリート相互作用(MCCI)の基礎的な現象理解を深めるため、数値流体解析手法のMoving Particle Semi-implicit(MPS)法を改良し、VULCANO VF-U1実験(VF-U1実験)にて溶融物金属成分がコンクリート壁に沿って分布するまでの伝熱流動の履歴を示した。令和4年度は特に以下を実施した:(1)従来のMPS法の界面張力モデルでは、すべての粒子間に引力ポテンシャルを与えるために粒子が界面以外でも凝集することで流動の非物理的な阻害や圧力の過大評価が発生するために、それらを抑制するための恣意的な界面張力のチューニングが必要であった。本研究では、界面付近にのみ斥力ポテンシャルを与えることで粒子の大域的な凝集を回避し、チューニングを伴わず正確に界面張力を考慮できる新モデルを開発し、VF-U1実験の解析に利用した。(2)炉心酸化物が溶融したコンクリートと混合することで金属成分と接する酸化物成分の物性が変化することを拡散モデルにより考慮した。混合に伴い金属成分に接する酸化物成分の固液相線温度が低下すると金属成分は容器底部に密度成層化した分布を保ったまま凝固することがわかったため、MCCI最中の炉心酸化物と溶融コンクリートの間の混合の程度はVF-U1実験では限定的であった可能性を示した。(3)上記の改良を統合したMPS法によるVF-U1実験の解析により、同実験後の残存デブリ中において金属成分がコンクリート側壁に沿って分布したのは、酸化物成分が冷えて半溶融/凝固状態となり、流動性が失われた後もコンクリートの下方への浸食が継続した結果、半溶融/凝固状態の酸化物層の沈降から押しのけられるように溶融金属成分がコンクリート側壁に沿って分布し、その後上部から凝固した結果もたらされたと理解できた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Progress in Nuclear Energy
巻: 150 ページ: 104311~104311
10.1016/j.pnucene.2022.104311
Proceeding of the 12th Japan-Korea Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety
巻: 12 ページ: 1101