細胞内でVAPがトポロジーを変化させる場所を特定するために、S2細胞での金コロイド免疫電子顕微鏡を用いた観察を行った。その結果、VAPは小胞体膜上でN末を細胞質側に向けていた。一方、細胞膜上では多くのVAPがN末を細胞外に向けていた。よって、VAPの大部分は細胞膜上でトポロジー変化している可能性が示唆された。 次に、VAPと同じⅡ型膜タンパク質であるNeurotactin、Star、Sec61βのトポロジー状態を、フローサイトメトリーを用いて解析した。その結果、これらの膜タンパク質はいずれもトポロジー変化しなかった。従って、トポロジー変化はVAP特異的な現象であることが示唆された。 さらに、VAPの膜貫通ドメイン内やその付近の荷電性アミノ酸や親水性アミノ酸を疎水性アミノ酸であるロイシンに置換したVAP変異体を作製したところ、これらのVAP変異体ではトポロジー変化が抑制されていた。したがって、VAPの膜貫通ドメイン内やその付近の電荷アミノ酸や親水性アミノ酸がVAPのトポロジー変化に重要であることが示唆された。 トポロジー変化の分子メカニズムを解明するために、CRISPRスクリーニングに向けた条件検討を行った。「ALFA―VAP―V5を恒常的に発現させたCas9発現細胞にゲノム挿入型のgRNAライブラリーを添加し、ALFA/V5の細胞外シグナルが変化した細胞をFACSで選別し、選別された細胞のゲノムに挿入されたgRNAのDNA配列をNGSで読む」という戦略でトポロジー制御遺伝子を探索する。現状としては、スクリーニングのための細胞株は樹立できており、次世代NGSを行うに至るまでのプロトコルは確立できた。確立したCas9発現細胞におけるgRNA挿入効率及びゲノム編集効率が良好であることも確認できたため、gRNAライブラリーを入手でき次第、スクリーニングを開始する。
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