研究課題/領域番号 |
21J12323
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉見 拓展 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | トポロジカルフォトニクス / フォトニック結晶 / 集積フォトニクス / 光導波路 / スピンテクスチャ |
研究実績の概要 |
令和三年度における取り組み・成果として、以下の二点があげられる。 一点目として、バレーフォトニック結晶(VPhC)導波路と細線導波路の高効率光カプラの実現に取り組んだ。VPhCスローライト導波路は、急峻な導波路曲げがある場合にも高効率な光伝搬が可能なスローライト導波路として注目されている。同スローライト導波路を集積光素子へと応用する上では、汎用的に用いられている細線導波路との高効率な光結合が重要であるが、両者はモード分布が大きく異なるため、これは容易ではない。そこで本研究では、両者を高効率に結合する光カプラ構造を考案し、数値計算と実験の両面においてこれを実証した。実験においては、半導体ナノ加工プロセスによってSiに光カプラ構造を作製し、近赤外帯域においてカプラ一つ当たり約1 dBの損失に抑えられることを示した。 二点目として、メロンスピンテクスチャと呼ばれる光のトポロジカルなスピンテクスチャの実現に向けた数値計算を行った。光のトポロジカルなスピンテクスチャは、固体内スキルミオンの励起や光通信といった応用が期待されている。近年、VPhCのバンド構造中に、メロンと呼ばれるスピンテクスチャが存在することが数値計算によって報告されており、その実験的観測が期待されている。そこで本研究では、Si基板を用いた同スピンテクスチャの観測に向けたVPhCの設計を行った。設計したデバイスは、基板上面からの光入出射によってスピンテクスチャの観測が可能と考えられる。 以上の成果は、トポロジカルフォトニクスの進展と集積光素子への応用につながるものであり、トポロジカル集積光素子の開拓を目指す本研究課題の重要な一歩と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、集積フォトニクス技術を用いて光トポロジカル相を実現し、素子作製後の機能の動的制御を実証することを通じて、トポロジカル集積光素子を開拓することを目的としている。 一方で、特別研究員はトポロジカル光素子を応用する上で重要な新たなアイデアを着想し、(1)バレーフォトニック結晶スローライト導波路の高効率光カプラの実証と、(2)メロンスピンテクスチャの実験的観測に向けた設計、の二点に取り組んできた。これらはいずれも、集積フォトニクス技術を用いたトポロジカル光素子の開拓につながるものであり、本研究における重要な成果と位置づけられる。よって、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より幅広い観点からトポロジカル集積光素子の開拓に取り組む。まずは、一年目に着想したメロンスピンテクスチャの実験的観測を目指す。SOI基板に作製したハニカム格子バレーフォトニック結晶を用いて、偏光分解フォトニックバンド測定を行う。フォトニックバンドの高次K点に位置すると予想されるメロンスピンテクスチャを観測する。 さらに、フラットバンドの活用や、非線形効果の導入を用いた新たな光学現象の開拓と実証を目指す。ハニカム格子やLieb格子に現れるフラットバンドについて検討し、バンドトポロジーとの新たな関連を見出すことを目指す。また、バレーフォトニック結晶の高次K点におけるDirac点を用いた高次高調波発生の探索を行う。高次高調波発生におけるバンドトポロジーの役割や、トポロジカルナンバーの保存則などについて検討する。
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