研究課題/領域番号 |
21J12329
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 勇太 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
キーワード | 神経・代謝・造血連関 / 骨髄ニッチ / セマフォリン / 神経ガイダンス因子 / 神経免疫 |
研究実績の概要 |
近年、疾患の病態解明において、細胞ー細胞あるいは、システムーシステムの連関の重要性が明らかとなってきた。申請者は神経ガイダンス因子セマフォリン6D(Sema6D)欠損マウスの解析から、1)骨髄における交感神経分布の亢進、高脂肪食(HFD)負荷における2)肥満抵抗性と3)造血異常といった、3つの異なるシステム変容を同時にきたすことを見出した。すなわち、Sema6Dが神経・代謝・造血システムの「ハブ」として機能している可能性が示唆された。これら神経・代謝・造血システムは生体機能の維持に欠かせないものであり、そのメカニズム解明は医学・医療の発展に大きく貢献するものと考える。本研究では「Sema6Dによる神経-代謝連関を介した骨髄ニッチ機構制御メカニズムの解明」を目指し、骨髄に焦点を当てて研究を進めている。イメージング解析の結果から、骨髄中のSema6Dは、交感神経や血管内皮細胞、間葉系細胞など、広範囲に発現していることがわかった。HFD負荷肥満モデルでSema6D欠損マウスに見られる表現型(代謝・造血異常)がどの細胞に依存するかを同定するため、細胞特異的Sema6D欠損マウスのHFD負荷肥満モデルの解析を勢力的に行ってきた。結果、神経細胞に発現するSema6Dが代謝・造血の制御に重要な機能を果たしていることが明らかとなった。さらに、Sema6Dと、近年代謝系との連関が重要視されているβ3アドレナリン受容体(Adrb3)とのダブルノックアウトマウスにおけるHFD負荷肥満モデルの解析から、Sema6D欠損マウスの表現系がAdrb3シグナルに依存したものであることが明らかとなった。今後、Sema6Dの結合分子の同定などより詳細なメカニズム解明を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19パンデミックの影響下、その病態解明のための研究にも従事しており、本研究は予定よりもやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
「Sema6Dによる神経-代謝連関を介した骨髄ニッチ機構制御メカニズムの解明」とその臨床応用を視野に研究を推進していく。上述の神経細胞特異的にSema6Dをノックアウトしたマウスにおいて、高脂肪食以外の刺激に対してどのような生体反応を示すのか、たとえば、臨床の現場でも使用される放射線照射や抗癌剤を同マウスに与えることでどのようにシステム変容をきたすのか描出する。さらに、セマフォリンの結合分子であるプレキシンノックアウトマウスの解析によって、神経ー代謝ー造血連関においてセマフォリンープレキシン分子シグナルがどのように関与しているのかを明らかにすることで、分子メカニズム的観点からも臨床応用できないかを検討していきたい。
|