研究課題/領域番号 |
21J12338
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
辻 勲平 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | SPH / 個別要素法 / 侵食 / 非解像型連成 / 解像型連成 |
研究実績の概要 |
豪雨による堤防決壊,津波による港湾構造物の被災など,水と土砂礫が入り混じる固液混相流による自然災害を再現し得る数値シミュレータの開発を目指した. まずは飽和地盤を対象として,個別要素法DEMによる礫質地盤の変形解析と,粒子法であるSPH法を用いた流体解析を連成し,津波による防波堤の捨石マウンド浸透崩壊シミュレーションを実施した.ここでは,Darcy-Brinkman式に従う空間平均されたDarcy流と,礫に作用する経験的な抗力を求める非解像型連成では,防波堤全体を崩壊に至らしめる局所的な地盤の侵食(噴砂)の表現が困難であることを示唆する結果を得た.本研究内容に関しては土木学会論文集に投稿し,掲載された. 今後,浸透流による地盤の局所的な破壊を精緻に再現するには,間隙流れを直接表現する解像型連成に基づく流体解析が有効である.間隙内部の複雑な流れを表現する手法へと改良すべく,まずはSPH法の従来の勾配モデルを見直し,1次コンシステンシーを有する勾配モデルを適用することで,従来手法で不可能だった負圧計算と,Karman渦列のような複雑な流れを表現出来る手法へと改良した. しかし,上述の間隙内部の流れを直接表現する解像型連成解析は,微視的なスケールの解析には有用であるものの,計算対象領域が大きくなるに連れて莫大な計算コストが生じることが予想される.そのため,大小の粒径の礫地盤内の局所的に大きな流速を持つ流れを効率的に計算する「解像・非解像型ハイブリッド連成手法」の開発を進めた.この連成手法は,大きな礫に対しては詳細な流れを求める解像型連成を,大きな礫が作る間隙内の小さな粒子群を透過する流れはDarcy流れとする非解像型連成を適用する.連成手法の使い分けにより,浸透流による地盤の局所的な侵食を効率的に表現出来る.本項目は,次年度以降にも継続して開発を進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)防波堤の捨石マウンド浸透崩壊シミュレーションを通じて,SPH-DEM非解像型連成手法の欠点となりうる局所的な地盤の侵食の再現性の問題点等を把握し,解析コードの高度化や大規模並列計算に向けた並列化を推し進める事ができた. 2)局所的な地盤の侵食を再現し得る解析コードにすべく,詳細な間隙内の流れを求める解像型連成手法への移行を検討した.そして,まずは流体解析におけるSPH法の従来の勾配モデルの見直しを行い,負圧計算を含む複雑な流れを安定して解ける解析手法へと改良した. 3)大規模並列計算機能を実装しているものの,解像型連成に基づく流体計算の計算コストは研究の遂行上,改善の余地があった.そこで,本課題の解決策として,詳細な流れを求める解像型連成と,平均的な浸透流と経験的な抗力を求める低コストな非解像型モデルを融合した「解像・非解像型ハイブリッド連成手法」の開発に着手し始めた. 4)上記の研究成果の一部は,いくつかの国内会議・国際会議で口頭発表を行い,一件の査読論文を投稿・掲載に至った. 5)現在未着手の不飽和地盤への適用に向け,不飽和地盤解析に向けた不飽和浸透流解析や,サクションを考慮した地盤の変形解析へと発展すべく,順次準備を進める.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は飽和地盤に限定した解析コードの開発・改良に重点的に取り組んだため,当初の計画だった気体を考慮した3相連成解析への拡張にはいまだ着手できておらず,不飽和地盤への適用には計画の軌道修正を必要とする可能性がある.まず,本年度開発を始めた「解像・非解像型ハイブリッド連成手法」を完成させ,高度化を図ったSPH-DEMによる流体-地盤解析手法をベースに,不飽和地盤への適用を目指してSPH法による不飽和浸透流解析並びにサクションを考慮した地盤の崩壊解析への発展へとつなげ,土構造物のマルチステージ解析へと応用を目指す.
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