研究実績の概要 |
細胞は、遺伝子情報を基にタンパク質が発現することで機能している。これらのタンパク質の発現量は高度に制御されていることが知られている。しかし、時には通常よりも多いタンパク質の発現が細胞に適応的効果をもたらすことも知られているが、どの遺伝子の過剰発現がどのような状況下で細胞に適応的効果をもたらすかについてはよく分かっていない。本研究では、出芽酵母の約6,000遺伝子から過剰発現が適応的に機能する遺伝子を体系的に取得する手法「過剰発現プロファイリング」を開発した。 過剰発現プロファイリングを用いて、高塩や高温、酸化ストレスなどのストレス環境下で適応的な遺伝子を体系的に取得した結果、過剰発現が適応的効果をもたらす遺伝子は、特定の遺伝的背景や環境下で細胞の適切な増殖にとって不足しているものを補っていることが明らかになった。例えば、塩ストレス下では、カルシウムのホメオスタシスに関連する遺伝子を過剰発現が適応的効果をもたらす遺伝子として取得した。これは塩ストレス下でのカルシウム不足に対応していることが示唆される。また、酸化ストレス下での銅イオンや高温ストレス下でのUrm1パスウェイなど、過剰発現プロファイリングから各ストレス状況で細胞が要求する要素が明らかになった。このことから、過剰発現プロファイリングを用いることにより、細胞がより早く増殖するために必要な要素を明らかにすることができるということが分かった。
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