研究課題/領域番号 |
21J12469
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
福田 真幸 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 強誘電体 / ペロブスカイト酸化物 / 高圧合成 |
研究実績の概要 |
本年度は、新規Aサイトcolumnar秩序型ペロブスカイト強誘電体の合成に着手した他、別のペロブスカイト化合物に対して、物性評価や相転移挙動の調査を行った。
A'平面サイトの秩序-無秩序転移に由来する強誘電性が注目されているAサイトcolumnar秩序型ペロブスカイトA2A'A''B4O12強誘電体として、巨大自発分極を生みだしうるカチオンであるV4+をBサイトに含む新たな化合物を合成した。V4+の巨大変位は鉛系化合物でのみ見られていたが、申請者のこれまでの研究で、Aサイトcolumnar秩序型ペロブスカイトにおいてその変位が生じうることが明らかとなっていた。しかし同時に、V4+は電荷移動の影響を受けやすいということが課題になっていた。本研究では適切な元素選択によってV4+の電荷状態を制御することに成功した。得られた化合物に対して、結晶構造解析や物性評価を行っているところである。 さらに、高圧合成とトポケミカル反応を組み合わせた特殊な合成手法により合成されるAサイト欠損四重ペロブスカイト、CuNb2O6が、室温および高温において、類似結晶構造を示し、かつ巨大誘電率化合物としてよく知られている四重ペロブスカイト、CaCu3Ti4O12に匹敵する誘電率を示すことを観察した。誘電率の周波数依存を詳細に解析することで、CuNb2O6の巨大誘電率の起源が空間電荷にあることを明らかにした。さらに、同化合物における、強磁性秩序と反強磁性秩序が競合している複雑な磁気秩序状態を発見した。この内容は王立化学会の英文誌、Journal of Materials Chemistry Cに掲載された。 また、圧力下X線回折実験および第一原理計算を組み合わせることで、ペロブスカイト強誘電体における圧力誘起相転移挙動に影響する要素を新たに見出し、論文としてまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、3種の研究を主におこなった。
Aサイトcolumnar秩序型ペロブスカイトの研究では、当初の目的であるV4+の電荷移動の抑制に成功しており、新たな強誘電体材料の設計指針となる結果を得ることができた。 また、当初意図していなかったが、新規Aサイト欠損四重ペロブスカイト、CuNb2O6に対して、物性評価を行うことで巨大誘電率など興味深い現象を発見し、論文として報告することができた。 加えて、圧力誘起相転移において、これまで注目されていなかった重要な要素を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
既に得られているAサイトcolumnar秩序型ペロブスカイトに対して、内容をまとめて論文として報告する。また、圧力誘起相転移の内容についても同様に論文を投稿する。
さらに、合成条件や化学組成の見直しを行うことで、これまで申請者が合成した化合物における強誘電性などの物性の向上を試みる。
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